初田ハートクリニックの法度

 初田がネルを引き取ってから三か月の頃のこと。

 十一月の半ばだから夜はかなり冷え込む。

 夕食の豆乳鍋を食べたあと、二人のお茶会が始まる。

 初田は人体実験と称し、いろいろとネルに飲食させていた。

「就寝一時間前にホットミルクを飲むと睡眠の質がよくなるそうです。なので今日はホットミルクを作りました」

「あんまり好きじゃない」

「じゃあハチミツを入れてみましょうか」

 ホットミルクを飲みながら、初田は『よりよい睡眠のための研究書』なるものを開く。

「質のよい睡眠には、睡眠ホルモンのメラトニンが必要。メラトニンはセロトニンから作られます。牛乳に含まれる成分がこのセロトニンの原料なんです」

「ハチミツを倍にしたらもっと増える気がする」

「では、今夜のホットミルクは牛乳二〇〇mlにハチミツ小さじ一杯で試して、明日は大さじ一杯にしてみましょう。その次はミルクココアを試しましょう」

 ネルはアレルギーがないので、初田の【良質な睡眠のための研究】がはかどる。

 ネルはネルで、ぐっすり眠れると朝起きたときに気分が良いから、“人体実験”に乗り気だった。

 まさに被検体(ネズミ)