翌日九時。
初田の手記を渡すと、白兎は丹念に目を通す。
出会ったときに宣言したとおり、初田は一日も欠かすことなくネルの症状を記録していた。
体温、血圧、症状、八年分取り続けた記録は、初田の誠実さの表れだった。
ページを繰る白兎の右手薬指には結婚指輪がはまっている。
白兎はこの八年の間に結婚し、今では五歳の息子を持つお母さんになっていた。
「ふむ。最近はだいぶ症状が落ち着いてきたな。薬の量を減らしても大丈夫そうだな」
「そうですか? それはよかった」
曾祖母の葬儀の日、初田が病院に行って検査しようと言い出さなければ、ネルは今ここにいなかった。
「次の通院は五週間後……いつも通り水曜でいいな。なにか聞いておくことはあるかい」
「一月の半ば、友だちの結婚式に呼ばれているんですけど、そういうところに参加しても大丈夫ですか」
「飲酒を控えてくれ。そこさえ守れば大丈夫だ」
「わかりました」
病院を出て、ネルは雪のちらつく道を歩く。
病院前から発車するバスが、都合のいいことに友子の暮らすアパート近くの停留所にとまってくれる。
友子に年末の挨拶をしてから家に帰るのが今日の予定だった。
初田の手記を渡すと、白兎は丹念に目を通す。
出会ったときに宣言したとおり、初田は一日も欠かすことなくネルの症状を記録していた。
体温、血圧、症状、八年分取り続けた記録は、初田の誠実さの表れだった。
ページを繰る白兎の右手薬指には結婚指輪がはまっている。
白兎はこの八年の間に結婚し、今では五歳の息子を持つお母さんになっていた。
「ふむ。最近はだいぶ症状が落ち着いてきたな。薬の量を減らしても大丈夫そうだな」
「そうですか? それはよかった」
曾祖母の葬儀の日、初田が病院に行って検査しようと言い出さなければ、ネルは今ここにいなかった。
「次の通院は五週間後……いつも通り水曜でいいな。なにか聞いておくことはあるかい」
「一月の半ば、友だちの結婚式に呼ばれているんですけど、そういうところに参加しても大丈夫ですか」
「飲酒を控えてくれ。そこさえ守れば大丈夫だ」
「わかりました」
病院を出て、ネルは雪のちらつく道を歩く。
病院前から発車するバスが、都合のいいことに友子の暮らすアパート近くの停留所にとまってくれる。
友子に年末の挨拶をしてから家に帰るのが今日の予定だった。



