初田ハートクリニックの法度

 ネルが眠ったのを確認してから、初田は保健室に入ってきた東堂と四人の女生徒と顔を合わせた。

 初田が最初に保健室に来た時点では、まだネルは眠っていた。

 養護教諭も、普段なら昼休みに入ってすぐ来るネルが保健室に来ないのを心配していたそうで、こんな事態になったことを何度も初田に謝罪した。

 一年と二年では担任がクラスメートに事情を周知してくれていたが、三年になり担任とクラスが替わった。

 新しいクラスでは事情を知らない生徒ばかりだから、こういうことが起きてしまったんだろう。

「さて、大まかな話は東堂君から聞きました。あなたたちがネルさんを無理矢理連れ回して休憩できないようにさせていたと。なぜそんな真似をしたのですか」

「だって、それは……あたしたちは善意のつもりだったし、寝てばかりだと体に悪いわ。それなのに倒れるなんて思わなくて」

 四人の中ではリーダー格らしい、ショートヘアで背の高い生徒が答えた。名札には花森(はなもり)と書かれている。

 他の三人も「ねー。よかれと思って。善意は受け取るべきよねー」と示し合わせたように言い合う。

 出てくる言葉は、謝罪ではなく保身だった。