初田ハートクリニックの法度

 目覚めると、そこは保健室のベッドの上だった。

「ネルさん!」

 白衣を着た初田に呼ばれ、ネルは答える。

「初斗、にいさん」

「廊下で倒れたって連絡をもらったので来ました。それと、東堂君から話を聞きました。今日はもう無理せずに帰りましょうか」

 初田が来てくれたのも幻かもしれない。

 本当は一人で、廊下に倒れたままなのかもしれない。

 ネルは横になったまま、ふとんから右手を出す。

 初田はネルの手を両手で包みこむ。

「ネルさん。わたしはちゃんとここにいますよ」

「……うん」

 保健室の先生が、カーテンの向こうから現れた。

「根津美さん、東堂君が鞄を持ってきてくれたわよ。それから同じクラスの女の子が何人か、話したいってきているんだけど、大丈夫そう?」

 ネルを引っ張り回した子たちのことだ。

 顔を見たくない。

「話ならわたしが聞きましょう。……ネルさん、寝ていていいですよ」

 ネルはふとんの中でうなずくと、安心して目を閉じた。