初田ハートクリニックの法度

 ネルは何度も「主治医の先生に言われているの、休まないと駄目だから保健室に行きたい」と訴えたけれど聞き入れてはもらえなかった。

(これが、まばろしだったらよかったのに)

 彼女たちの言い分は、いっぱい動けば体にいい。

 それはあくまでも健康体の人ならばという大前提がある。

 ネルの場合、睡眠を人より多く取らないと体に負担がかかる。

 お弁当を食べることすらできないまま昼休みが終わろうとしていた。

 あと五分で午後の授業がはじまる、という時間になってようやく解放してもらえた。

「明日もやろーね」

「そうそう。運動って大事だよ」

 なんて笑顔で言われて、ネルは泣きたい気持ちでいっぱいだった。

 もっと気が強ければ、絶対に嫌だと言い張れたのにそれができない。

 廊下が無限に伸びているように見える。

 教室に行きたいのに、どれが自分のクラスに続く入り口なのか分からない。

 そこで意識が途絶えた。