初田ハートクリニックの法度

 五十代くらいの男性駅員がネルに呼びかける。眼鏡をかけた、穏やかそうな人だ。

「ああ、目が覚めたかね。大丈夫? これに書かれている番号に連絡したから、すぐに親御さんが来ますよ」

「ありがとう、ございます」

 まわりに結構な人数が集まっていた。ネルが起きたのを見て、散っていく。

 時間は駅に入ってから二十分くらいしか経っていない。

 脱力発作と睡眠発作どちらも起こしてしまっていたらしい。

 怪我がなかったのが幸い。

 鞄に下げた携帯が、初田からの着信専用に設定したメロディを奏でる。

『ネルさん! よかった、出た。今そっちに向かっているので、あと五分くらい待ってください』

「にいさん。ありがと」

 通話が切れて、誰かがネルのそばにきた。

 同じ学校の制服を着た男子だ。

 名札には東堂(とうどう)と書いてあり、ネルと同じ学年だとわかった。

 三年生の名札には青いアンダーラインが入っているのだ。

 背丈はネルより少し高い程度で、男子にしては低め。

 茶に染めた髪を短く刈っている。

 健康的な筋肉がついた体は、見るからに体育会系の人のものだった。