初田ハートクリニックの法度

「明日、お母さんに連絡して学用品や荷物を取りに行こうか。宿題もたくさんでているだろう?」

「出てるけど、まだほとんどやってない」

「数学以外なら手伝えるよ」

「にいさん数学嫌いなの?」

「そう。数学は正解があるから嫌いなんだよ」

 簡単な夕飯を済ませて交代で風呂に入って、九時過ぎにはふとんを並べて敷く。

 ネルには、初音が泊まりに来たとき用のふとんを使ってもらうことになった。

 初対面の親戚の家で暮らすことになったというのに、ネルはあまり動じていない。

 何年もここに住んでいたかのような落ち着きぶりで、いっそ初田の方が驚いた。

 初田は大学入学を機に一人暮らしを始めたから、誰かが家にいるというのはずいぶんと久しぶりの感覚だ。

 おやすみ、と挨拶を交わして眠りにつく。

 奇妙な同居生活はこうしてスタートした。