初田ハートクリニックの法度

 帰りの車の中、初田は助手席のネルに問いかける。

「ネルさんには将来の夢ってあるかい」

「探している途中」

 素で詩人みたいなことを言い出したので、初田は笑ってしまう。

 今度はネルが聞いてきた。

「にいさんには、夢、ある?」

「わたしは独立して、自分のクリニックを持ちたいな」

「良いと思う」

 これが医師の先輩だったら、「お前みたいな若造には無理だ」と返されていたことだろう。

 しばらく他愛のない話をしてマンションに着いた。