初田ハートクリニックの法度

 ネルはナルコレプシーという病気のこと、何年も投薬治療をしなければならないことなど黙って聞いた。

 それから薬の副作用についてや、日中に昼寝をとることで症状が緩和されるなどの対処法を教わる。

「絶対治るわけじゃ、ないの?」

「そうだな。あくまでも、今の医学では対症療法しかない。ああ、対症療法って言うのは、薬を飲んで症状を緩和させることを言う」

 初田が事前に話したように、白兎もまた、完治するとは言わなかった。

 医者としてできることとできないことははっきりと言う。

 下手に期待を持たせることはできない。

 顔を曇らせるネルに、初田は冷静に伝える。

「ネルさんと同じナルコレプシーでも、きちんと社会に出て働いている人もいる。どうしても健康体の人より選択肢は少なくなってしまうけれど、その選択肢の中で好きな道を選べるよう、わたしが協力しよう」

「ありがとう、初斗にいさん」

 同じ病の人でも社会生活を送れているのだと知って、ネルは少しだけ表情を和らげた。