初田ハートクリニックの法度

 初田初斗のはとこ(・・・)であるということは、嘉神平也のはとこ(・・・)でもある。

 殺人犯とつながりがあるのではないか? と邪推する人はいくらでもいるだろう。

「ならわたしは、一日でも早く独立して自分のクリニックを持ちましょう。この顔をさらしさえしなければ、誰にもわたしと平也のつながりはわからない。着ぐるみの頭でもかぶって診療しましょうか」

 もともと初田は、必要な経験を積んだあとは個人病院を持とうと考えていた。

 ここにいる間は顔を隠すことができないが、自分の病院なら自分がルールだ。

 初田は自分が何を言われてもなんとも思わない人間だが、家族が貶されるのは受け入れられない。


「精神科医の独立は、少なくとも五年の専門医従事経験が必要だな」

「たったの五年で自分の城が持てるなら万々歳ですよ。開業したらお茶会を開くので、一番に先輩を招待しますね」

 初田はこうと決めたら譲らないタイプなのだ。
 
 世の中広いのだから、かぶり物をした個人開業医がいたってかまわないだろう。

「そのときはバターまみれの時計をプレゼントしてやるよ」

 白兎は声を立てて笑い、初田の背中を叩いた。