初田ハートクリニックの法度

 ネルは退院したら初田のところに住む、ということに決まった。

 検査の結果がなんであれ、なんらかの睡眠障害であるのは疑いようのない事実だ。

 友子はいったん自宅へと帰った。

 ネルが入院している間、セーラー服を着たままというわけにはいかない。

 PSG検査は個室でないと行えないため、急ピッチで空いている病室の準備が進められていく。

 手持ち無沙汰で、ネルは患者用の休憩スペースの椅子に座ってぼんやりしていた。

「ネルさん、アレルギーはあるかい」

「ない」

「そう。なら退院して帰ったらお茶会をしようか。紅茶はなにが好きかな」

「私たち、お茶会するの?」

「帽子屋と眠りネズミはお茶会をするって相場が決まっているだろう?」

「たのしそう。あとは三月ウサギがいたらかんぺき」

 不思議の国のアリスでは、帽子屋と眠りネズミ、三月ウサギが終わらないお茶会を繰り広げているひとまくがある。

「悪いけど、三月ウサギ(マーチヘイヤ)はいないんだ。今日のところはこれで我慢してくれ」

 初田が自販機で買ってきたホットの紅茶をネルの手に持たせる。

 真夏にホットティーなのか、と他の人なら突っ込んだのだろうが、ネルは細かいことを気にしないタイプだった。