初田ハートクリニックの法度

「……相変わらず変人だな、初田君は」

 一連のやりとりを見守っていた白兎の感想に、初田は心外だとばかりに言い返す。

「先輩も学生時代と変わらず失礼ですね。わたしがネルさんを扶養することがそんなにおかしい提案ですか」

「そんな思いつきでホイホイ人を養っていたら、君は大家族になってしまうぞ」

「赤の他人なら助けないですが、ネルさんは親族(はとこ)ですし。一緒に暮らせば症状を観察できます。睡眠障害の診療経験が増えれば、正確な診断を下せるようになります。つまりネルさんを助けるのは未来への投資になるんです」

 養う上に、どれだけの年数かかるかわからない治療費を全部負担すると言われて、ネルは縮こまる。

 高校生の身でも、かなり高額になることは予想ができた。

「私がいると、初斗にいさんの迷惑になりませんか。それに治療費すごく高くなるんでしょう?」

「迷惑だなんて一言も言ってないよ」

「私こんなだからバイトもできないし、初斗にいさんになにも返せないのに」

「睡眠障害をすぐそばで観察できることはわたしのメリットになる。君はわたし専用の被検体(ネズミ)といったところかな。お母さんに月一で病状変化をお伝えしましょう」

 友子も白兎も、そして診察室にいた看護師たちも絶句した。