コウキから事情を聞き取ることができたので、初田はようやく礼美を診察室に呼んだ。
「それで? この子治るんです? もう異常なことはしません? 来年の入試を受け直して一年遅れになるにせよ、いい高校を出ていい大学を出て公務員になってもらいたいんです」
一時的にとはいえ診察室から追い出されていたため、礼美は不機嫌を隠さない。
コウキは居心地悪そうに視線を落とす。
「お母さん。一つ言っておくとね、子どもが生き物を殺すこと……それ自体は誰しも通る道だから、別段問題はないんだよ。今回問題になったのは、分別のつく年齢になってから猫殺しをしたからだ」
「え?」
初田は手元で何か千切るような仕草をしながら、小首を傾げる。
「お母さんは幼稚園児くらいの頃に、友だちとバッタの足をちぎったことありません? 捕まえた赤トンボの頭と羽をむしって赤唐辛子ごっこ。わたしは玄関に赤唐辛子を並べて置いたら、おばあちゃんにゲンコツされたよ。かわいそうなことするなって」
笑いながら戸棚を開けて、缶の中から新しいおせんべいを出す。
七味がまぶされた唐辛子せんべいだ。
冷めて湯気が立たなくなったティーカップの横に唐辛子煎餅を添えて、歌うように言う。
「さあお母さん。もっと紅茶をどうぞ。今日はとてもおめでたい日だからお祝いしないと」
「いっ、要らないわ」
「残念」
礼美は赤トンボを千切った話をしたあとに唐辛子せんべいを出す初田の神経を疑った。
「それで? この子治るんです? もう異常なことはしません? 来年の入試を受け直して一年遅れになるにせよ、いい高校を出ていい大学を出て公務員になってもらいたいんです」
一時的にとはいえ診察室から追い出されていたため、礼美は不機嫌を隠さない。
コウキは居心地悪そうに視線を落とす。
「お母さん。一つ言っておくとね、子どもが生き物を殺すこと……それ自体は誰しも通る道だから、別段問題はないんだよ。今回問題になったのは、分別のつく年齢になってから猫殺しをしたからだ」
「え?」
初田は手元で何か千切るような仕草をしながら、小首を傾げる。
「お母さんは幼稚園児くらいの頃に、友だちとバッタの足をちぎったことありません? 捕まえた赤トンボの頭と羽をむしって赤唐辛子ごっこ。わたしは玄関に赤唐辛子を並べて置いたら、おばあちゃんにゲンコツされたよ。かわいそうなことするなって」
笑いながら戸棚を開けて、缶の中から新しいおせんべいを出す。
七味がまぶされた唐辛子せんべいだ。
冷めて湯気が立たなくなったティーカップの横に唐辛子煎餅を添えて、歌うように言う。
「さあお母さん。もっと紅茶をどうぞ。今日はとてもおめでたい日だからお祝いしないと」
「いっ、要らないわ」
「残念」
礼美は赤トンボを千切った話をしたあとに唐辛子せんべいを出す初田の神経を疑った。


