琵琶のほとりのクリスティ

 後日、私がオフの日に、件の二人がやって来て、謝罪と共に珠子さん自慢の食事を摂って行ったらしい。
 味の感想は、言わずもがな。とにかくも猛省していたようで、クリスさんの方が根負けするくらいの勢いだったようだ。
 お兄さんの方は、名前を陸也(りくや)さんと言うらしい。
 何でも、色々と吹っ切れて仕事に集中なさった末、見事に損失分の取返しの目途が立ったのだとか。
 そんな良い話もあってか、淡海ではこれでもかというくらいに頼み、全て綺麗に平らげてから帰ったと話していた。



 それからと言うもの――

「でな、雫。その教授が間違っとったことが分かったから、あたしが指摘したったんや。そしたら――」

 北村さんは、たまに『淡海』を訪れ、私を見つけては、忙しくなければ話しかけて来るようになった。
 大学が本格的に始まってから少し経ったある日、構内でばったり出会ったことがきっかけだった。
 まさか、同じ大学の先輩後輩だったとは。
 世間って、狭いものなんだなぁ。

「――って、聞いとる、雫?」

「えっ! は、はい、えっと、ぼーっとしってました!」

「あははっ! 見とったら分かるわそれぐらい。何考えとったん?」

「えっと、世間は狭いなぁと」

「世間? あぁ、あたしらのこと? ほんまやんなー。まさかうちの新入生ちゃんやったとは驚いたわ。学科は?」

「文学部です。高校まではほぼ体育会系でしたが、文学文系にも凄く興味があったので」

「体育会系か……ズバリ、バスケやな?」

「えっ、凄い、正解です。どうして分かったんです?」

「似合いそうやから何となく! 昔から『人を見る目だけはあるっ』て、よお言われるんよ」

 北村さんは明るくはにかんで言う。
 それはまた違う意味な気がするけれど。

「っと、言っとる間にちょっと混んで来たな。あたしもそろそろ行くわ。また大学でなー、今度一緒に学食行こ! なんか美味しいもん奢ったるし」

「あ、はっ、はい! ありがとうございました!」

 最後にバッチリ明るくウインクを決めると、北村さんはお店を後にした。
 話してみればとても楽しく、明るく、ユーモアたっぷりな人。お兄さんの他、下に弟か妹でもいるのか、年下である私の扱いも慣れているように感じる。
 天真爛漫、無邪気、といった言葉が似合いそうな性格だから、きっと無意識のことなんだろうけれど……。
 あのお兄さんとも、話してみれば、もしかしたらもう少し――

 そんな感じで、私の大学生活も幕を開けた。
 大変に忙しいものではあるけれど、同時にとてもやりがいもある。
 ……もちろん、勉学の方も頑張らないと、だけれど。