嘘つき優等生

「おかえり、“詩悠(しはる)ちゃん”」
「ただいま」
 もう、こんなことにも慣れてしまった。
「……申し訳ないな、実柚(みゆず)
「全然大丈夫だよ」
 いつもより早く帰って来ていたお父さんに、そう言われる。
 ……そんなこと言わないでよ。
 もっと、惨めになるだけなのに……。
「今日はね、詩悠(しはる)ちゃんが好きな、海鮮丼にしたの」
「ありがとう!」
 本当は、海鮮丼なんて嫌い。
 お姉ちゃんは、好きだったけど……。
「たくさん食べてね」
 ……そんなに、いらないよ…………。
 でも、そんなことは言えない。
 私は、お母さんの中では、“(ほし) 詩悠(しはる)”だから。
 言えないよ……。
 また、お姉ちゃんが死んじゃった時みたいなお母さんには……抜け殻みたいなお母さんには、なってほしくないから。
「どう?美味しい?」
「……うん、美味しいよ」
 私は今日も、嘘をつく。