嘘つき優等生

「またね、実柚(みゆず)ちゃん」
「うん、またねー」
 朝の笑顔を貼り付けて、教室を去る。
 私は、完璧な学級委員長じゃないといけない。
 いつも笑顔で、優しくて、明るくて。
 そんな、お姉ちゃんみたいな……。
実柚(みゆず)
涼葉(すずは)!ごめんね、待たせて」
「全然大丈夫」
 仁科(にしな) 涼葉(すずは)
 私の幼なじみで、親友。
 頭が良くて、テストの結果はいつも学年一位。
 同じ美術部員。
「そういえば、今日、(そら)、髪色変えてたよね?」
「見たの?」
「うん。一時間目の時に遅れて来てたでしょ?私五組だから、教室から見えるんだよ。廊下歩いて、三組に向かってる(そら)
 (そら)くんは、私たちと同じ美術部員。
 あまり顔は出さないけれど、たまに作品を出しに来る。
「……(そら)ってさ、なんか良いよね。自由で」
「そう?」
「うん……。なんか、実柚(みゆず)とは正反対のタイプって感じ?実柚(みゆず)は、本音を隠して、無理して笑ってる感じだけど、(そら)は本心のまま生きてるよね」
 ……やっぱり、涼葉(すずは)は分かってる。
 私が、お姉ちゃんみたいになろうとしていることを。

詩悠(しはる)ちゃんがいなくなっちゃうなんて……。お母さん、どうしたら良いの?』

 いつだったか、お母さんがそう言っていた。
 お母さんは、お姉ちゃんを溺愛していた。
 血は繋がっていなかったけれど、大切な娘だと言っていた。
 私がお姉ちゃんみたいになろうと思ったのは、お母さんの為だった。
 私がお姉ちゃんみたいになれば、少しは悲しみが薄れるかな、って考えたから。
 ……でも、逆効果だった。
 お母さんは、私の中にお姉ちゃんを見るようになって、変わってしまった。
 私を、「詩悠(しはる)」だと思うようになった。
 私はもう、お姉ちゃんの歳を越えてしまったから、余計にそう思われるようになった。
 辛かった。
 私は、「詩悠(しはる)」じゃないのに。
 実柚(みゆず)なのに……。
 そう思ううちに、分からなくなってしまった。
 お姉ちゃんみたいになりたいと思っていたのに、お母さんに「詩悠(しはる)」と呼ばれたら、苦しくなって……。
 なにがしたいのか、分からなくなってしまった。
 それが、今の私だった。