拝啓、嘘で結ばれた君へ

「ねえ、西洞院(にしのとういん)さん。図書館だより、作ってくれない?途中までしか出来てなくて……。提出、今日の放課後までなんだよ。でも、今日部活のミーティングがあって……」
「……良いよ。私、やっとく」
「ほんと⁉ありがとー」
 頼まれると断れない。
 直したいけれど、直せない性格。
 そのせいで、今も他のクラスの子に、図書館だよりの作成を頼まれた。
 ……私の仕事じゃないのに。
 まあ、途中まで出来ているなら、簡単だろう。
 図書委員に配られているカードをかざして、部屋に入る。
 図書だより用のパソコンを持って、図書室の隅のほうの机で作業を始める。
 残っていたのは、『おすすめの本』というコーナーだった。
 その名の通り、図書室にあるおすすめの本を紹介するコーナーだ。
 私は、このコーナーが苦手だ。
 なんとなく、ジャンルが偏ってしまうから。
 少し重い気分になりながら、本を探す。
 毎月四冊紹介しないといけない。
 二冊は私の好きなジャンルの本にする。
 残りの二冊にいつも悩まされる。
 ……どうしよう。
 とりあえず、二冊の本の紹介を書く。
「……梛乃(なぎの)?」
「こっ、(こう)……」
「なにしてるの?」
 振り向くと、そこには、(こう)がいた。
「図書館だより、作ってて……」
「ああ。三越(みこし)に頼まれてたやつ?」
「そうだよ」
 見られてたんだ、あの時……。
「それ、三越(みこし)の仕事だろ?」
「……断れないんだよ、私」
 小学生の時、『空気読めないやつ』にされたことがあった。
 それ以来、みんなの顔色を窺って生きるようになった。
 ……もう二度と、孤立したくないから。
「ふーん。……手伝うよ、俺。なにしたら良い?」
「え、いや、良いよ。悪いし……」
「良いって。俺がやりたいんだし」
「じゃあ――」



「これとか、おすすめ。面白かったし」
「そうなんだ……。今度読んでみようかな」
 真剣にパソコンを向き合っている彼を、思わず見てしまう。
 窓から差し込む光が、彼を照らしている。
 ……私は、彼を裏切っている。
 好きでもないのに、告白して、付き合って……。
 どうしてあの時、断れなかったんだろう。
 今になって、後悔が襲い掛かって来る。
 ……好きじゃないのに、付き合うんじゃなかった。



「ほんとにありがとう、手伝ってくれて」
「全然良いよ」
 帰り道。
 彼と駅への道を歩く。
 言葉にできない感情が、胸の奥で疼いている。
「……優しいよな、梛乃(なぎの)って」
 唐突にそう言った(こう)
「でもさ、たまには、自分にも優しくしたほうが良いんじゃない?」
「え……?」
「たまには、自分のことも甘やかしなよ。空気読むだけじゃなくてさ。……じゃ、俺、こっちだから」
 彼は、なにも知らないのに。
 彼とは小学校が違うから、あの頃のことを知らない。
 習い事をやっていた訳でもないから、他校との関わりは全くなかった。
「……ごめんね、(こう)
 君に嘘の告白をしてしまって。
 クラスメイトに流されてしまって。
 本当に、ごめんなさい――。