拝啓、嘘で結ばれた君へ

「……ごめん、待った?」
「ううん。全然待ってない。しかも、待ち合わせの時間より五分早いし。大丈夫だよ」
 待ち合わせ場所は、駅の近くの時計台広場だった。
「……じゃあ、行こっか」
「うん……」
 緊張しているのか、口数が少ない。
 少し歩くと、すぐに水族館が見えてきた。
 小さい頃、よく家族と行っていた水族館だ。
「はい、これ、チケット」
「ありがと……」
 久しぶりだなー。
「なに見たい?」
「うーん……。クラゲとか、チンアナゴとか……?あと、クマノミ……?」
 小さい頃に見た生き物を思い出す。
「じゃあ、それ見に行こう。確か、東館にいるはずだから」
「うん、行こう」



 水族館は、休日ということもあって、人が多かった。
 特に東館は、綺麗な色の魚が多いから、人が多い。
「あ、クラゲ……」
「ほんとだ……。綺麗だね」
「うん、そうだね」
 ふいに見た彼の横顔は、とても美しかった。
 ……そりゃあモテるよな。
「ん?どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
 じっと見つめてしまっていたからか、彼が不思議そうにこちらを見る。
 ダメダメ。
 ちゃんとクラゲを見ないと……。
「そろそろ、西館、行く?人多くて、疲れたよね?」
「あ、うん。そうだね。ありがとう……」



「はい、これ。ソフトクリーム」
「ありがと」
 ベンチに腰掛けて、二人でソフトクリームを食べる。
「…………可愛い」
「え……?」
梛乃(なぎの)、すっごく可愛い」
 私を見つめて、そう言ってくれる(こう)
 私は、彼の瞳に吸い込まれてしまいそうだった。
 食べているソフトクロームは、いつもより甘い気がして。
 ……その後のことを、私は全く覚えていなかった。
 唯一覚えていたのは、二人でお揃いのキーホルダーとペンを買ったことだった。