拝啓、嘘で結ばれた君へ

「……西洞院(にしのとういん)。ちょっと良い?」
「うん、良いよ」
 放課後。
 帰宅部の私は、同じく帰宅部の高坂(こうさか)くんに呼び止められる。
「……昨日の、ことなんだけど」
「ん?なに?」
「あれって…………」
 まさか、『ウソコク』に気づいてる?
「……ごめん、やっぱり、なんでもない」
「そう?なら良いけど」
「……でさ、俺、西洞院(にしのとういん)のこと、なんて呼んだら良い?」
「…………梛乃(なぎの)
 なんとなく、そう言った。
 本当に、なんとなく。
 名字より、名前のほうが良いかな、って。
「……梛乃(なぎの)?」
「うん」
「……じゃあ、俺のことは(こう)で」
「………………(こう)、くん……?」
 少し緊張しながら、そう呼ぶ。
(こう)だけで良いよ」
「……(こう)
 私を見て、そう言ってくれる彼に、少し申し訳ないと思った。
 ……洸(こう)は、私をちゃんと好きでいてくれているのに。
「今度の日曜、出掛けない?そのー、水族館、とか」
「……いいよ。何時に待ち合わせする?」
 私たちは恋人だ。
 たとえ、私から彼への恋心がなかったとしても。