拝啓、嘘で結ばれた君へ

「見て!可愛い!」
 俺は、梛乃(なぎの)と一緒に、美術館に来ていた。
 今流行りのキャラクターの展示が期間限定で見れるから。
 ……こういう時、フィクションでは、「君のほうが可愛い」とか言うんだろうけど、現実では絶対に言えない。
 恥ずかしすぎる。
「そうだなー」
 無難に返しておく。
「じゃあ、第二展示室行こうよ!」
 ずっと考えていたことがある。
 ……梛乃(なぎの)は、本当に俺のことが好きなのか?
 告白の時、一度も俺の目を見なかったし、言葉に感情がこもっていなかったような気がした。
 でも、俺は彼女が好きだった。
 優しくて、いつも笑顔で、……でも、本当は無理していそうな、彼女が。
 だから、告白を受け入れた。
 彼女は、これが嘘の告白だと言わなかった。
 ……今でも、少しモヤモヤしている。
「そうだなー」
 さっきと同じように返す。
 それでも、彼女は不服そうではなかった。



「楽しかったね。ありがと、(こう)
「どういたしまして」
 普通のカップルが、どんなことをするのか、俺には分からない。
 どういう感じで接したらいいのか、分からない。
「……次は、どこ行く?」
「うーん。そうだなぁ……。(こう)が行きたいところにしようよ!」
 振り向いて、そう笑う彼女。
 ……やっぱり、俺は君が好きだ。
「どこ行きたい?」
「難しいなー……。考えとくよ」
「うん!」
 俺より少し前を歩く彼女。
 一体、どこへ向かっているのだろう。
 分からないけれど、とりあえずついていく。
 階段を上る。
「見て!良い景色でしょ」
「…………ほんとだ……」
 着いたのは、高台にある展望デッキだった。
「この前、友達のこの近くに来た時、見つけたんだよね」
 展望デッキからは、海が見える。
 キラキラした目で、彼女はそれを見ている。
「……梛乃(なぎの)。こっち向いて」
「ん?」
 唇に触れたものは、とても温かかった。
 それが、俺たちのファーストキスだった。