贈り物……?
促されるまま、震える指先を扉にかける。
ガチャリ、と小さく音が立ち、扉が開いた。
室内には、僅かな間接照明に照らされて、部屋の中央に見たこともないほど純白のドレスが飾られていた。
繊細な刺繍の上に散りばめられた宝石が淡い光を反射し、まるで星屑を縫い留めたかのように眩く輝いている。
白いのに、冷たくない。光を抱いているみたいだ。
「俺のために、これを着てほしい」
「……私の、ドレス……なんですか?」
「もちろんだ。世界でただ一人、すみれのためだけに用意させた」
——やっぱり、私はずっと夢を見ているのではないだろうか。
ふらりとした足取りで、ドレスの傍らへ歩み寄る。
白無垢の伝統的な白とも違う、どこか真珠のような深みのある白。
こんなにも美しい衣がこの世に存在していたなんて。
蔵にいた頃の私が見れば、天女の衣だと思い込んでしまったに違いない。
「お召し変え、私の方でお手伝いしますね。すみれ様」
「……信子さん……」
暁臣様が一旦部屋を離れ、信子さんと二人きりになる。
帯を解き、着物を脱いでいく。
肌に触れる空気が冷たくて、現実が戻ってくるのが少し怖い。
これまで、洋服は暁臣様に贈られたものを数回袖に通した程度だった。
信子さんが持ってきてくださった、あの小説の一節を思い出す。
異国の地では、このような白いドレスを纏って永遠の愛を誓うお話があった。
まさか、あの物語の主人公が纏っていたようなドレスを、私自身が身に纏う日が来るなんて。
帯とは少し違う、背中をきゅっと引き締められる感触に、背筋が自然と伸びる。
息が浅くなり、胸の鼓動が速くなる。
——逃げたいのではない。嬉しさに、追いつけないだけ。
「仕上げに、ヴェールも着けましょうね」
「……ヴェール?」
目の前で膝をつくように座る信子さんの手によって、ふわりと半透明の繊細な生地が頭上に掲げられた。
視界が白く霞み、透けた生地越しに見る世界が、いつもよりずっと優しく、神秘的に映る。
息を呑む。
まるで、自分が自分ではない誰かになったみたいで。
「……すみれ様。本当に……本当にお綺麗で……」
「信子さん……」
「……申し訳ありません。本当でしたら、このようなお役目は朝霞様のご身内の方がなされるべきなのに……私ごときが……」
促されるまま、震える指先を扉にかける。
ガチャリ、と小さく音が立ち、扉が開いた。
室内には、僅かな間接照明に照らされて、部屋の中央に見たこともないほど純白のドレスが飾られていた。
繊細な刺繍の上に散りばめられた宝石が淡い光を反射し、まるで星屑を縫い留めたかのように眩く輝いている。
白いのに、冷たくない。光を抱いているみたいだ。
「俺のために、これを着てほしい」
「……私の、ドレス……なんですか?」
「もちろんだ。世界でただ一人、すみれのためだけに用意させた」
——やっぱり、私はずっと夢を見ているのではないだろうか。
ふらりとした足取りで、ドレスの傍らへ歩み寄る。
白無垢の伝統的な白とも違う、どこか真珠のような深みのある白。
こんなにも美しい衣がこの世に存在していたなんて。
蔵にいた頃の私が見れば、天女の衣だと思い込んでしまったに違いない。
「お召し変え、私の方でお手伝いしますね。すみれ様」
「……信子さん……」
暁臣様が一旦部屋を離れ、信子さんと二人きりになる。
帯を解き、着物を脱いでいく。
肌に触れる空気が冷たくて、現実が戻ってくるのが少し怖い。
これまで、洋服は暁臣様に贈られたものを数回袖に通した程度だった。
信子さんが持ってきてくださった、あの小説の一節を思い出す。
異国の地では、このような白いドレスを纏って永遠の愛を誓うお話があった。
まさか、あの物語の主人公が纏っていたようなドレスを、私自身が身に纏う日が来るなんて。
帯とは少し違う、背中をきゅっと引き締められる感触に、背筋が自然と伸びる。
息が浅くなり、胸の鼓動が速くなる。
——逃げたいのではない。嬉しさに、追いつけないだけ。
「仕上げに、ヴェールも着けましょうね」
「……ヴェール?」
目の前で膝をつくように座る信子さんの手によって、ふわりと半透明の繊細な生地が頭上に掲げられた。
視界が白く霞み、透けた生地越しに見る世界が、いつもよりずっと優しく、神秘的に映る。
息を呑む。
まるで、自分が自分ではない誰かになったみたいで。
「……すみれ様。本当に……本当にお綺麗で……」
「信子さん……」
「……申し訳ありません。本当でしたら、このようなお役目は朝霞様のご身内の方がなされるべきなのに……私ごときが……」



