静まり返ったお邸に戻り、ふと夜空を見上げた。
頬を撫でる空気は昼間よりずっと肌寒さを増している。けれどその分、空は冴え渡り、中天に輝く月と満天の星々が、私たちの帰還を祝福するように瞬いていた。
長い一日だった。
あまりに濃密で、まるで美しい夢の断片を繋ぎ合わせているような心地がする。
極度の疲労からか、足元がどこかふわふわと浮き上がるようで、思わず暁臣様の腕を強く掴んだ。
暁臣様は黙って私の肩を抱き寄せ、その体温で支えてくれる。
触れているだけで、地面に戻ってこられる。
「殿下、すみれ様。本日の善き日に立ち会わせていただき、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました」
玄関の前で、藤波様、篠塚様、そして信子さんの三人が揃って深く、深く頭を下げられた。
「そんなっ……!私の方こそ、皆さんに頼り切りで、ご迷惑ばかりおかけしてしまって……」
「皆、大儀だった。これほどまでの滞りない進行、実に見事だった。後日、改めて相応の礼をさせてくれ」
藤波様と篠塚様が静かに車へ乗り込まれると、暁臣様が残った信子さんに声をかけた。
「信子殿……もう少しいいか?すみれの最後の手伝いをお願いしたい」
最後の手伝い——?
首を傾げる間もなく、私はぐっと肩を引かれるようにしてお邸の中へ導かれる。
何も説明されないまま、柔らかな光が灯る廊下を奥へ奥へと進む。
ちらりと暁臣様の横顔を盗み見ても、前を見据えたまま、何一つ言葉を発しない。
信子さんもまた、すべてを察しているのか静かに後ろをついてくる。
心地よい沈黙だけが廊下に満ち、やがて私の部屋の前へ辿り着いた。
「あ、あの……暁臣様?」
「……開けてみるといい。お前のための贈り物だ」
頬を撫でる空気は昼間よりずっと肌寒さを増している。けれどその分、空は冴え渡り、中天に輝く月と満天の星々が、私たちの帰還を祝福するように瞬いていた。
長い一日だった。
あまりに濃密で、まるで美しい夢の断片を繋ぎ合わせているような心地がする。
極度の疲労からか、足元がどこかふわふわと浮き上がるようで、思わず暁臣様の腕を強く掴んだ。
暁臣様は黙って私の肩を抱き寄せ、その体温で支えてくれる。
触れているだけで、地面に戻ってこられる。
「殿下、すみれ様。本日の善き日に立ち会わせていただき、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました」
玄関の前で、藤波様、篠塚様、そして信子さんの三人が揃って深く、深く頭を下げられた。
「そんなっ……!私の方こそ、皆さんに頼り切りで、ご迷惑ばかりおかけしてしまって……」
「皆、大儀だった。これほどまでの滞りない進行、実に見事だった。後日、改めて相応の礼をさせてくれ」
藤波様と篠塚様が静かに車へ乗り込まれると、暁臣様が残った信子さんに声をかけた。
「信子殿……もう少しいいか?すみれの最後の手伝いをお願いしたい」
最後の手伝い——?
首を傾げる間もなく、私はぐっと肩を引かれるようにしてお邸の中へ導かれる。
何も説明されないまま、柔らかな光が灯る廊下を奥へ奥へと進む。
ちらりと暁臣様の横顔を盗み見ても、前を見据えたまま、何一つ言葉を発しない。
信子さんもまた、すべてを察しているのか静かに後ろをついてくる。
心地よい沈黙だけが廊下に満ち、やがて私の部屋の前へ辿り着いた。
「あ、あの……暁臣様?」
「……開けてみるといい。お前のための贈り物だ」



