震える暁臣様の声に、恐る恐る瞼を上げる。
どうしたことだろう。
抱き合った私たちの身体全体が、幻想的な紫色に発光しているように見えた。
髪が強い静電気を帯び、重力から解き放たれたみたいにふわふわと中空を漂っている。
その不思議な光は、やがて穏やかに——
私の身体へ吸い込まれるように収束していった。
「馬鹿な……直撃したはずの雷が、消えた……?」
「……すみれ様……一体……」
遠くで、呆然自失とした東宮殿下と綾乃様の震える呟きが、静まり返った庭園に落ちる。
やがて荒れ狂った雷鳴が遠ざかるにつれ、辺りには湿った土の匂いと、焼け焦げたような微かな残香が漂い始めた。
重く垂れ込めていた雲が涙を零すように、ポツリ、ポツリと冷たい雨が私の頬を濡らし始める。
「はぁ……はぁ……暁臣様……。お怪我は……ご無事ですか……?」
「……俺のことはいい。すみれ、お前こそ大丈夫なのか。どこか痛む所は」
「私は……大丈夫です。どこも、痛くありません……」
「そうか……ああ、良かった……」
喉の奥から、絞り出すような安堵の声。
暁臣様の震える掌が、私の頬へ伸びる。
まるで無事を確かめる印みたいに、指先がそっとなぞった。
その手は、いつも私を支えてくれる強固なものとは違う。
僅かに、けれど確かに、恐怖の名残を宿しているように見えた。
「本当に、無事で良かった……すまない、すみれ」
あのような……醜くも無様な所を見られてしまった。
他の男に抱きすくめられ、暁臣様を絶望させるくらいなら——
いっそ雷に打たれて死んでしまいたいとさえ願ったのに。
こうして今、私は生きて、暁臣様の温かな腕の中にいる。
胸の奥が、遅れてじわりと痛んだ。
安堵と羞恥と、言い訳のつかない現実が、ぐしゃぐしゃに絡み合う。
「なぜだ……。なぜ、『黒薔薇』を、暁臣を選ぶ」
背後から、地を這うような呪詛の声が響いた。
どうしたことだろう。
抱き合った私たちの身体全体が、幻想的な紫色に発光しているように見えた。
髪が強い静電気を帯び、重力から解き放たれたみたいにふわふわと中空を漂っている。
その不思議な光は、やがて穏やかに——
私の身体へ吸い込まれるように収束していった。
「馬鹿な……直撃したはずの雷が、消えた……?」
「……すみれ様……一体……」
遠くで、呆然自失とした東宮殿下と綾乃様の震える呟きが、静まり返った庭園に落ちる。
やがて荒れ狂った雷鳴が遠ざかるにつれ、辺りには湿った土の匂いと、焼け焦げたような微かな残香が漂い始めた。
重く垂れ込めていた雲が涙を零すように、ポツリ、ポツリと冷たい雨が私の頬を濡らし始める。
「はぁ……はぁ……暁臣様……。お怪我は……ご無事ですか……?」
「……俺のことはいい。すみれ、お前こそ大丈夫なのか。どこか痛む所は」
「私は……大丈夫です。どこも、痛くありません……」
「そうか……ああ、良かった……」
喉の奥から、絞り出すような安堵の声。
暁臣様の震える掌が、私の頬へ伸びる。
まるで無事を確かめる印みたいに、指先がそっとなぞった。
その手は、いつも私を支えてくれる強固なものとは違う。
僅かに、けれど確かに、恐怖の名残を宿しているように見えた。
「本当に、無事で良かった……すまない、すみれ」
あのような……醜くも無様な所を見られてしまった。
他の男に抱きすくめられ、暁臣様を絶望させるくらいなら——
いっそ雷に打たれて死んでしまいたいとさえ願ったのに。
こうして今、私は生きて、暁臣様の温かな腕の中にいる。
胸の奥が、遅れてじわりと痛んだ。
安堵と羞恥と、言い訳のつかない現実が、ぐしゃぐしゃに絡み合う。
「なぜだ……。なぜ、『黒薔薇』を、暁臣を選ぶ」
背後から、地を這うような呪詛の声が響いた。



