【Web版】無華の花嫁3~秘めた力を狙われた少女は、黒薔薇の殿下に溺愛される~

「はっ!さすがは『王華』と呼ばれる『黒薔薇』だね」

 ようやく掴まれていた腕が放され、私は一歩よろめく。
 綾乃様が咄嗟に肩を抱いて支えてくださった。

「すみれ様っ!」
「綾乃。すみれをしっかり抑えていろ」

 命じるような口調。
 言い終えるより早く、東宮殿下の右腕がゆっくりと天へ掲げられた。

「私が指先から放つ程度の雷しか起こせないとでも思っているのか?」
「……なんだと?」

 突如、頭上でゴロゴロと地鳴りのような音が響き始めた。
 先ほどまで重苦しく垂れ込めていただけの曇天が、瞬く間に墨を流したような漆黒へと塗り替えられていく。

「ふふっ。見せてあげよう。『黄薔薇』の中でも最大級の火力を誇る、真の『雷鳴』を。——人間に使うのは初めてだが、君なら耐えられるだろう?」

 私を支える綾乃様の肌から、パリッ、と静電気の弾ける音がした。
 互いの顔を見合わせると、結い上げた髪がふわりと逆立つ。まるで無重力みたいに。

「瞬間的な火力のみに限定すれば、『黒薔薇』の破壊すら凌駕すると自負している」

 ——ドンッ!!!!

 鼓膜を突き破るほどの轟音。
 巨大な落雷が、東宮殿下の真上に落ちた。

 そんな……。
 目も眩むような青白い雷光に包まれながら、東宮殿下が平然と立っている。
『異能』とは天候すら従え、世界の色を塗り替えるほど恐ろしいものだったなんて。