どれほどの時間が経ったのだろう。
出かけるからと朝から女中さんに丁寧に施してもらったお化粧は、もう跡形もない。
ハンカチに色が移るほど泣きじゃくったせいで視界は重く、こめかみの辺りがズキズキと脈打つように痛む。
ふと互いの無残な顔を見合わせて、綾乃様が「ふふっ」と吹き出す。
それにつられるようにして、私も喉の奥で小さく笑ってしまった。
「……お互い、酷い顔ですわね」
「……はい……あ!でも、綾乃様はそれでもお美しいです……!」
「すみれ様こそ、泣き顔までそんなに可憐だなんて……ずるいですわ」
そんなこと、あるわけがないのに。
けれど綾乃様は見た目だけでなく、心根まで凛としてお美しい方なのだと、今さらのように痛感する。
「五条殿下をお待たせしてしまいましたわね。戻りましょう」
「はい」
暁臣様……。
一刻も早くあの方の姿を見て、息をつきたい。
二人で庭園の静寂を抜け、来た道を戻ろうと歩み出した——そのとき。
「——でかした。よくやったよ、綾乃」
背後から、聞き覚えのない冷ややかな声が落ちてきた。
次の瞬間、見知らぬ香りに包まれ、後ろから強引に抱きすくめられる。
覚えのない腕の圧。
傲慢な声音。
全身の毛穴が開くような戦慄が走り、喉が「ひゅっ」と引き攣った音を立てるのが自分でもわかった。
「……っ、あ……!?」
出かけるからと朝から女中さんに丁寧に施してもらったお化粧は、もう跡形もない。
ハンカチに色が移るほど泣きじゃくったせいで視界は重く、こめかみの辺りがズキズキと脈打つように痛む。
ふと互いの無残な顔を見合わせて、綾乃様が「ふふっ」と吹き出す。
それにつられるようにして、私も喉の奥で小さく笑ってしまった。
「……お互い、酷い顔ですわね」
「……はい……あ!でも、綾乃様はそれでもお美しいです……!」
「すみれ様こそ、泣き顔までそんなに可憐だなんて……ずるいですわ」
そんなこと、あるわけがないのに。
けれど綾乃様は見た目だけでなく、心根まで凛としてお美しい方なのだと、今さらのように痛感する。
「五条殿下をお待たせしてしまいましたわね。戻りましょう」
「はい」
暁臣様……。
一刻も早くあの方の姿を見て、息をつきたい。
二人で庭園の静寂を抜け、来た道を戻ろうと歩み出した——そのとき。
「——でかした。よくやったよ、綾乃」
背後から、聞き覚えのない冷ややかな声が落ちてきた。
次の瞬間、見知らぬ香りに包まれ、後ろから強引に抱きすくめられる。
覚えのない腕の圧。
傲慢な声音。
全身の毛穴が開くような戦慄が走り、喉が「ひゅっ」と引き攣った音を立てるのが自分でもわかった。
「……っ、あ……!?」



