朝の光はどこまでも柔らかなのに、私の胸の奥だけは、凪ぐことのないさざ波が立ち続けている。
窓辺に差し込む白い光は穏やかで、昨日の出来事など何一つ知らない顔をしているのに。
枕元の時計が、淡い音すら立てずに時間を刻んでいく。
昨夜、私はきちんと眠れたのだろうか。
それとも、覚醒と夢の狭間を行き来しながら、ただ目を閉じていただけなのか。
考えようとすると、輪郭が曖昧になって、はっきり思い出せない。
瞼を閉じれば、今も鮮やかな紫色の花が浮かぶ。
藤棚の下。
揺れる花房が落とす、複雑で繊細な影。
あの場の空気まで、胸の奥に蘇ってくる。
そして——。
暁臣様の、熱を帯びた唇。
頬に触れられた瞬間の、あの火照るような熱が、今も肌の奥に残っている気がしてならない。
慈しむようでいて、どこか切迫した、追い詰められたような手つき。
私を閉じ込めた腕の力は、これまでのどのときよりも強く、痛いほどだった。
「……昨日の、こと……」
独り言のように零れた声は、静かな部屋に溶けて、何の答えも返さない。
暁臣様と唇を重ねたのは、これで六度目。
けれど、昨日の暁臣様は、どこかいつもと違って見えた。
私が花に見惚れている間も、その視線は、私ではない何か——
背後にある、遠い所にある何かを警戒しているようで。
唇を寄せてくださったとき、その眼差しだけが、凍てつくように冷たく光っていた気がする。
——私が、何か不手際をしてしまったのかもしれない。
そんなはずはない、と心の中で否定する。
私はただ、咲き誇る藤を綺麗だと思い、暁臣様の温もりに身を委ね、そのお言葉に頷いただけだ。
それなのに、胸のざわつきが、どうしても収まらない。
窓辺に差し込む白い光は穏やかで、昨日の出来事など何一つ知らない顔をしているのに。
枕元の時計が、淡い音すら立てずに時間を刻んでいく。
昨夜、私はきちんと眠れたのだろうか。
それとも、覚醒と夢の狭間を行き来しながら、ただ目を閉じていただけなのか。
考えようとすると、輪郭が曖昧になって、はっきり思い出せない。
瞼を閉じれば、今も鮮やかな紫色の花が浮かぶ。
藤棚の下。
揺れる花房が落とす、複雑で繊細な影。
あの場の空気まで、胸の奥に蘇ってくる。
そして——。
暁臣様の、熱を帯びた唇。
頬に触れられた瞬間の、あの火照るような熱が、今も肌の奥に残っている気がしてならない。
慈しむようでいて、どこか切迫した、追い詰められたような手つき。
私を閉じ込めた腕の力は、これまでのどのときよりも強く、痛いほどだった。
「……昨日の、こと……」
独り言のように零れた声は、静かな部屋に溶けて、何の答えも返さない。
暁臣様と唇を重ねたのは、これで六度目。
けれど、昨日の暁臣様は、どこかいつもと違って見えた。
私が花に見惚れている間も、その視線は、私ではない何か——
背後にある、遠い所にある何かを警戒しているようで。
唇を寄せてくださったとき、その眼差しだけが、凍てつくように冷たく光っていた気がする。
——私が、何か不手際をしてしまったのかもしれない。
そんなはずはない、と心の中で否定する。
私はただ、咲き誇る藤を綺麗だと思い、暁臣様の温もりに身を委ね、そのお言葉に頷いただけだ。
それなのに、胸のざわつきが、どうしても収まらない。



