「園遊会での着用は、できかねる」
暁臣様の断固とした声が、使者の言葉を遮った。
「しかし……殿下直々のご指定にございます」
「後日、五条家より丁重なお礼状と共に、賜った品はすべて御所へお納めする。——今のすみれに、これほどの重責を負わせるわけにはいかない」
暁臣様の大きな手が、私の固く握りしめた拳を包み込む。
その温もりで、やっと息ができた。
「園遊会には白ではなく、すみれに一番似合う色で、俺の隣に立たせる」
さっきまでの刃のような冷たさとは違う。
いつもの、優しい響き。
「それに——彼女に純白を着せるのは、秋まで大切にとっておきたい」
秋。
暁臣様と一緒に選んだ、白無垢を纏う季節。
不安の闇に、僅かな光が差し込むような心地がして、ようやく顔を上げられた。
「……すみれ様も、五条殿下と同じご意見でしょうか?」
使者の鋭い視線が私を射抜く。
大丈夫。言える。
私は大きく息を吸い込み、逃げ出したくなる気持ちを押し込めて、まっすぐ前を見た。
「……はい。私も、暁臣様のお考えと同じでございます」
掠れた声で、精一杯絞り出した一言。
けれどそれは、紛れもなく私自身の心からの願い。
東宮殿下からの贈り物を拒むことが、どれほど恐ろしいことなのか——私には想像もつかない。
それでも私は、暁臣様からいただいた想いを、この身に纏いたい。
使者を乗せた車が玄関先から遠ざかっていく。
新緑が眩しい並木道。
車の影が消えるまで、私は暁臣様の隣で、深く、深く頭を下げ続けた。
——どうしよう。園遊会が、怖い。
日差しはこんなにも暖かいのに、指先だけが悴むほどに冷たい。
そっと握られた暁臣様の掌の温もりだけを頼りに、新しい嵐の予感に震えていた。
暁臣様の断固とした声が、使者の言葉を遮った。
「しかし……殿下直々のご指定にございます」
「後日、五条家より丁重なお礼状と共に、賜った品はすべて御所へお納めする。——今のすみれに、これほどの重責を負わせるわけにはいかない」
暁臣様の大きな手が、私の固く握りしめた拳を包み込む。
その温もりで、やっと息ができた。
「園遊会には白ではなく、すみれに一番似合う色で、俺の隣に立たせる」
さっきまでの刃のような冷たさとは違う。
いつもの、優しい響き。
「それに——彼女に純白を着せるのは、秋まで大切にとっておきたい」
秋。
暁臣様と一緒に選んだ、白無垢を纏う季節。
不安の闇に、僅かな光が差し込むような心地がして、ようやく顔を上げられた。
「……すみれ様も、五条殿下と同じご意見でしょうか?」
使者の鋭い視線が私を射抜く。
大丈夫。言える。
私は大きく息を吸い込み、逃げ出したくなる気持ちを押し込めて、まっすぐ前を見た。
「……はい。私も、暁臣様のお考えと同じでございます」
掠れた声で、精一杯絞り出した一言。
けれどそれは、紛れもなく私自身の心からの願い。
東宮殿下からの贈り物を拒むことが、どれほど恐ろしいことなのか——私には想像もつかない。
それでも私は、暁臣様からいただいた想いを、この身に纏いたい。
使者を乗せた車が玄関先から遠ざかっていく。
新緑が眩しい並木道。
車の影が消えるまで、私は暁臣様の隣で、深く、深く頭を下げ続けた。
——どうしよう。園遊会が、怖い。
日差しはこんなにも暖かいのに、指先だけが悴むほどに冷たい。
そっと握られた暁臣様の掌の温もりだけを頼りに、新しい嵐の予感に震えていた。



