言葉を失う。
極上の正絹に、これでもかと繊細な刺繍が施された、白無垢と見紛うほどの純白。
それでいて、淡い光を抱いた刺繍が細やかに走り、品の良い気配だけが立ち上る。
次々に開けられる箱。
豪華な帯、帯締め、足袋、草履——支度に必要なものすべてが揃えられていた。
これが単なる『贈り物』ではないことくらい、世間知らずの私にも分かる。
拒めないように整えられた一式。
それは祝意という形を借りた、絶対的な意思表示——支配の輪郭そのものだった。
「東宮殿下は、なんと仰っている」
暁臣様の冷徹な声が、室内の温度を数度下げた。
その低い響きが、この贈り物の不吉さを、はっきりと告げている。
「来週の園遊会では、ぜひこちらをお召しになられるように——との言付けにございます」
園遊会。
頭の中が真っ白になった。
園遊会では、暁臣様が私のために初めて選んでくださった、あの振袖を着ると決めていたのに。
花菱屋さんにお願いして、仕立ててくださった、薄紫の——私にとって特別な一着を。
「よろしければ、当日のお支度もこちらから手配いたしますが」
「あ、あの……こんな、身に余るお品……いただくわけには参りません」
「東宮殿下からの直接の贈り物です。辞退など、決してあってはならないことかと」
「で、ですが……園遊会で着るものは、もう……用意してございますので……」
困る。
本当に、困る。
私が着たいのは、白ではない。
何も持たなかった私に、初めて与えられた『思い出の着物』。
暁臣様の気持ちが縫い込まれた、あの一着。
どうしたらいいのか分からず、視界が滲む。
俯くなと言われているのに、これ以上言葉を紡げない。
この方の向こうに、東宮殿下がイルカと思うと、固く目を閉じて、震えることしかできない。
極上の正絹に、これでもかと繊細な刺繍が施された、白無垢と見紛うほどの純白。
それでいて、淡い光を抱いた刺繍が細やかに走り、品の良い気配だけが立ち上る。
次々に開けられる箱。
豪華な帯、帯締め、足袋、草履——支度に必要なものすべてが揃えられていた。
これが単なる『贈り物』ではないことくらい、世間知らずの私にも分かる。
拒めないように整えられた一式。
それは祝意という形を借りた、絶対的な意思表示——支配の輪郭そのものだった。
「東宮殿下は、なんと仰っている」
暁臣様の冷徹な声が、室内の温度を数度下げた。
その低い響きが、この贈り物の不吉さを、はっきりと告げている。
「来週の園遊会では、ぜひこちらをお召しになられるように——との言付けにございます」
園遊会。
頭の中が真っ白になった。
園遊会では、暁臣様が私のために初めて選んでくださった、あの振袖を着ると決めていたのに。
花菱屋さんにお願いして、仕立ててくださった、薄紫の——私にとって特別な一着を。
「よろしければ、当日のお支度もこちらから手配いたしますが」
「あ、あの……こんな、身に余るお品……いただくわけには参りません」
「東宮殿下からの直接の贈り物です。辞退など、決してあってはならないことかと」
「で、ですが……園遊会で着るものは、もう……用意してございますので……」
困る。
本当に、困る。
私が着たいのは、白ではない。
何も持たなかった私に、初めて与えられた『思い出の着物』。
暁臣様の気持ちが縫い込まれた、あの一着。
どうしたらいいのか分からず、視界が滲む。
俯くなと言われているのに、これ以上言葉を紡げない。
この方の向こうに、東宮殿下がイルカと思うと、固く目を閉じて、震えることしかできない。



