「すみれ様に、東宮御所から使者がいらしています」
「え……?」
春の園遊会を一週間後に控えた、穏やかな昼下がり。
あまりに突然の来訪に、縋るような思いで隣の暁臣様を見上げた。
何かを察したのか、暁臣様の整った表情が、一瞬で氷のように険しくなる。
その変化だけで、胸の奥にざわりと嫌な予感が広がっていった。
——ひょっとして。
先日、簪をお返ししたことでお叱りを受けるのではないか。
私が叱られるだけなら、まだいい。
けれど、もし私のせいで暁臣様にまで不敬の火の粉が及ぶのだとしたら……。
「心配するな。一緒に行こう」
「……はい……」
不安を吸い取るように差し伸べられた温かな手。
私はその掌の温もりだけを頼りに、重い足取りで応接室へ向かった。
扉が開かれると、そこにいたのは、東宮の紋章をつけた使者。
そして、テーブルの上に並べられた——大小さまざまな桐の箱が、いくつも。
すべての蓋に刻まれた金色の家紋が、眩いほどに光を放っている。
簪を受け取ってしまった後、藤波様から教わった。
箱にある家紋は、天皇家を象徴する『十六葉八重表菊』。
「東宮殿下より、すみれ様に。お届けに参りました」
使者が事務的な声で告げ、恭しく紐を解く。
蓋が持ち上がり、箱の中から現れたのは——眩いばかりの、真っ白な振袖だった。
「……っ」
「え……?」
春の園遊会を一週間後に控えた、穏やかな昼下がり。
あまりに突然の来訪に、縋るような思いで隣の暁臣様を見上げた。
何かを察したのか、暁臣様の整った表情が、一瞬で氷のように険しくなる。
その変化だけで、胸の奥にざわりと嫌な予感が広がっていった。
——ひょっとして。
先日、簪をお返ししたことでお叱りを受けるのではないか。
私が叱られるだけなら、まだいい。
けれど、もし私のせいで暁臣様にまで不敬の火の粉が及ぶのだとしたら……。
「心配するな。一緒に行こう」
「……はい……」
不安を吸い取るように差し伸べられた温かな手。
私はその掌の温もりだけを頼りに、重い足取りで応接室へ向かった。
扉が開かれると、そこにいたのは、東宮の紋章をつけた使者。
そして、テーブルの上に並べられた——大小さまざまな桐の箱が、いくつも。
すべての蓋に刻まれた金色の家紋が、眩いほどに光を放っている。
簪を受け取ってしまった後、藤波様から教わった。
箱にある家紋は、天皇家を象徴する『十六葉八重表菊』。
「東宮殿下より、すみれ様に。お届けに参りました」
使者が事務的な声で告げ、恭しく紐を解く。
蓋が持ち上がり、箱の中から現れたのは——眩いばかりの、真っ白な振袖だった。
「……っ」



