【Web版】無華の花嫁3~秘めた力を狙われた少女は、黒薔薇の殿下に溺愛される~

「すみれ様に、東宮御所から使者がいらしています」
「え……?」

 春の園遊会を一週間後に控えた、穏やかな昼下がり。
 あまりに突然の来訪に、縋るような思いで隣の暁臣様を見上げた。
 何かを察したのか、暁臣様の整った表情が、一瞬で氷のように険しくなる。
 その変化だけで、胸の奥にざわりと嫌な予感が広がっていった。

 ——ひょっとして。
 先日、簪をお返ししたことでお叱りを受けるのではないか。
 私が叱られるだけなら、まだいい。
 けれど、もし私のせいで暁臣様にまで不敬の火の粉が及ぶのだとしたら……。

「心配するな。一緒に行こう」
「……はい……」

 不安を吸い取るように差し伸べられた温かな手。
 私はその掌の温もりだけを頼りに、重い足取りで応接室へ向かった。

 扉が開かれると、そこにいたのは、東宮の紋章をつけた使者。
 そして、テーブルの上に並べられた——大小さまざまな桐の箱が、いくつも。
 すべての蓋に刻まれた金色の家紋が、眩いほどに光を放っている。

 簪を受け取ってしまった後、藤波様から教わった。
 箱にある家紋は、天皇家を象徴する『十六葉八重表菊』。

「東宮殿下より、すみれ様に。お届けに参りました」

 使者が事務的な声で告げ、恭しく紐を解く。
 蓋が持ち上がり、箱の中から現れたのは——眩いばかりの、真っ白な振袖だった。

「……っ」