舌の奥に、きゅうっと鋭い苦味が突き刺さった。
に、苦い……っ。
目の奥がきゅっと縮んで、肩が跳ねる。
あまりの衝撃に慌てて飲み下したけれど、喉を通っていく間もずっと、口の中が『苦い』という未知の感覚で大騒ぎしている。
「どうした。口に合わなかったか?」
「い、いえ……その……」
顔が熱い。二口目を啜る勇気がどうしても湧かず、カップを持ったまま、思わず目をきゅっと閉じてしまった。
情けなくて、恥ずかしくて、でも——本当に苦い。
どうして暁臣様は、こんなに厳しい味がするものを平然と飲まれているのだろう。
ひょっとして、私のだけ違う飲み物なんじゃ……。
いえ、暁臣様がそんな子供染みた真似をされるはずがない。
……ない、のに。悪戯っぽい目をしている気もする。
私はもう一度、勇気を振り絞ってほんの少しだけ口をつけてみた。
さっきよりも慎重に、量を減らしてみたけれど、やっぱり私の舌は悲鳴を上げてしまう。
喉が、きゅっと縮む。飲み込みたいのに飲み込めない。
「……どうだ。感想を聞かせてくれ」
「……その……とっても、苦くて……」
自分でも情けないほど細い声が出てしまったと思う。
「ぷっ……くくっ、ははは!」
暁臣様は、私の反応をじっと観察していたかと思うと、突然吹き出すように笑い出した。
その笑い方が、なんだか悔しいのに、むしろ、胸の奥がほどけてしまう。
「すまない……すみれがそういう反応をするだろうな、と分かっていて、つい意地悪をしてしまった」
暁臣様の瞳には、悪戯が成功した子供のような、それでいてひどく優しい色が宿っている。
彼は私の手からそっとカップを取り上げると、それを自分の方へ引き寄せ、通りかかった店主を呼び止めた。
「悪いが、こちらの珈琲は引いてくれ。代わりに——これを。クリームを多めにできるか?」
暁臣様がメニューの一角を指差すと、店主は心得たように深く頷いて下がっていった。
私のせいで恥をかかせてしまったのではないか……。
そればかりが気になって、指先を弄んでしまう。
袖口の縫い目をなぞって、落ち着こうとする。
身分の差や、経験のなさを改めて痛感し、少しだけ胸がチクリと痛んだ。
けれど、そんな私の沈んだ気持ちを弾き飛ばすように、「お待たせいたしました」という明るい声が響いた。
目の前に置かれたのは、ガラスの器に乗った不思議な食べ物だった。
「……っ、わぁ……!」
に、苦い……っ。
目の奥がきゅっと縮んで、肩が跳ねる。
あまりの衝撃に慌てて飲み下したけれど、喉を通っていく間もずっと、口の中が『苦い』という未知の感覚で大騒ぎしている。
「どうした。口に合わなかったか?」
「い、いえ……その……」
顔が熱い。二口目を啜る勇気がどうしても湧かず、カップを持ったまま、思わず目をきゅっと閉じてしまった。
情けなくて、恥ずかしくて、でも——本当に苦い。
どうして暁臣様は、こんなに厳しい味がするものを平然と飲まれているのだろう。
ひょっとして、私のだけ違う飲み物なんじゃ……。
いえ、暁臣様がそんな子供染みた真似をされるはずがない。
……ない、のに。悪戯っぽい目をしている気もする。
私はもう一度、勇気を振り絞ってほんの少しだけ口をつけてみた。
さっきよりも慎重に、量を減らしてみたけれど、やっぱり私の舌は悲鳴を上げてしまう。
喉が、きゅっと縮む。飲み込みたいのに飲み込めない。
「……どうだ。感想を聞かせてくれ」
「……その……とっても、苦くて……」
自分でも情けないほど細い声が出てしまったと思う。
「ぷっ……くくっ、ははは!」
暁臣様は、私の反応をじっと観察していたかと思うと、突然吹き出すように笑い出した。
その笑い方が、なんだか悔しいのに、むしろ、胸の奥がほどけてしまう。
「すまない……すみれがそういう反応をするだろうな、と分かっていて、つい意地悪をしてしまった」
暁臣様の瞳には、悪戯が成功した子供のような、それでいてひどく優しい色が宿っている。
彼は私の手からそっとカップを取り上げると、それを自分の方へ引き寄せ、通りかかった店主を呼び止めた。
「悪いが、こちらの珈琲は引いてくれ。代わりに——これを。クリームを多めにできるか?」
暁臣様がメニューの一角を指差すと、店主は心得たように深く頷いて下がっていった。
私のせいで恥をかかせてしまったのではないか……。
そればかりが気になって、指先を弄んでしまう。
袖口の縫い目をなぞって、落ち着こうとする。
身分の差や、経験のなさを改めて痛感し、少しだけ胸がチクリと痛んだ。
けれど、そんな私の沈んだ気持ちを弾き飛ばすように、「お待たせいたしました」という明るい声が響いた。
目の前に置かれたのは、ガラスの器に乗った不思議な食べ物だった。
「……っ、わぁ……!」



