従兄弟だと聞いたけれど……暁臣様とは、あまり似ていないような気がした。
似ていない、のに。胸の奥がざわつくのは、私が見られることに過敏になっているせいなのだろうか。
けれど、先ほどの一瞬の視線。
どこかで、同じような視線を感じた記憶がある。
背に冷たい指先が触れたみたいに、ぞくりとした。
それはずっと昔のことではない。
つい、最近——。
そうだ、新年の祝賀会。
あのとき、背中に刺さるように感じた正体不明の視線。
厳かなあの場の中、なぜか私だけが『見られている』と分かった、あの感覚。
それが、今目の前にいるお方のものと同じであることに、私は唐突に気が付いた。
……東宮殿下。あの方が……?
茶会が佳境に入った頃。
東宮殿下が朗らかな声で切り出すと、彼の隣に座っていた女性が、羽衣が翻るような優雅な所作ですっと立ち上がった。
椅子が擦れる音すら控えめで、周囲の空気が一段、澄む。
「この度は、急な誘いにもかかわらず集まってくれたことに感謝する。この場を借りて、皆に紹介したい者がいる」
「近衛 綾乃殿。私の、そしてこの国の未来を共にする、東宮妃だ」
綾乃様……。
あの方が、いずれ皇后となられるお方。
会場からは溜息のような感嘆の声が漏れ、地響きのような拍手が沸き起こる。
白い手袋が揃って打たれ、宝石の光が揺れ、歓声が花のように開く。
その熱狂に当てられそうになった私に、隣の暁臣様が耳元で低く囁いた。
「今日の茶会は、実質彼女のお披露目だ。俺たちを呼んだのも、そのための数合わせに過ぎない」
暁臣様の視線は、熱狂に沸く上座をどこか突き放したように冷ややかに見つめている。
祝福の輪の外側から、静かに観察しているみたいに。
私は、自分たちの婚約が宣誓されたあの祝賀会の場を思い出さずにはいられなかった。
あのときの、疎らで、どこか困惑の混じった拍手。
『黒薔薇』と『無華』を前にして、祝っていいのか迷っているような——あの、微妙な間。
もし私が『無華』ではなく、もっと高貴な『華』を宿していたなら。
家格も、綾乃様のように申し分ないほど高かったなら。
暁臣様の隣に立つ私は、このように祝福の嵐に包まれていたのだろうか。
拍手は迷わず、視線は温かく、言葉は躊躇なく。
私の存在が、暁臣様に『祝福されない婚儀』を強いてしまった。
そう思うと、胸の奥を鋭利な刃でなぞられるような痛みが走る。
痛みは一瞬で、けれど確かに残り、呼吸が浅くなる。
私がいなければ——と、口にしてはいけない考えが喉元までせり上がってきて、慌てて飲み込んだ。
似ていない、のに。胸の奥がざわつくのは、私が見られることに過敏になっているせいなのだろうか。
けれど、先ほどの一瞬の視線。
どこかで、同じような視線を感じた記憶がある。
背に冷たい指先が触れたみたいに、ぞくりとした。
それはずっと昔のことではない。
つい、最近——。
そうだ、新年の祝賀会。
あのとき、背中に刺さるように感じた正体不明の視線。
厳かなあの場の中、なぜか私だけが『見られている』と分かった、あの感覚。
それが、今目の前にいるお方のものと同じであることに、私は唐突に気が付いた。
……東宮殿下。あの方が……?
茶会が佳境に入った頃。
東宮殿下が朗らかな声で切り出すと、彼の隣に座っていた女性が、羽衣が翻るような優雅な所作ですっと立ち上がった。
椅子が擦れる音すら控えめで、周囲の空気が一段、澄む。
「この度は、急な誘いにもかかわらず集まってくれたことに感謝する。この場を借りて、皆に紹介したい者がいる」
「近衛 綾乃殿。私の、そしてこの国の未来を共にする、東宮妃だ」
綾乃様……。
あの方が、いずれ皇后となられるお方。
会場からは溜息のような感嘆の声が漏れ、地響きのような拍手が沸き起こる。
白い手袋が揃って打たれ、宝石の光が揺れ、歓声が花のように開く。
その熱狂に当てられそうになった私に、隣の暁臣様が耳元で低く囁いた。
「今日の茶会は、実質彼女のお披露目だ。俺たちを呼んだのも、そのための数合わせに過ぎない」
暁臣様の視線は、熱狂に沸く上座をどこか突き放したように冷ややかに見つめている。
祝福の輪の外側から、静かに観察しているみたいに。
私は、自分たちの婚約が宣誓されたあの祝賀会の場を思い出さずにはいられなかった。
あのときの、疎らで、どこか困惑の混じった拍手。
『黒薔薇』と『無華』を前にして、祝っていいのか迷っているような——あの、微妙な間。
もし私が『無華』ではなく、もっと高貴な『華』を宿していたなら。
家格も、綾乃様のように申し分ないほど高かったなら。
暁臣様の隣に立つ私は、このように祝福の嵐に包まれていたのだろうか。
拍手は迷わず、視線は温かく、言葉は躊躇なく。
私の存在が、暁臣様に『祝福されない婚儀』を強いてしまった。
そう思うと、胸の奥を鋭利な刃でなぞられるような痛みが走る。
痛みは一瞬で、けれど確かに残り、呼吸が浅くなる。
私がいなければ——と、口にしてはいけない考えが喉元までせり上がってきて、慌てて飲み込んだ。



