女中さんに導かれ、暁臣様の斜め後ろを歩きながら邸内を進む。
皇居の荘厳さともまた違う、磨き上げられた歴史の重みに気圧されそうになる。
床板が微かに軋む音さえ遠慮がちに響き、背中が勝手に強張る。
中庭に面した長い廊下を通る際、自分の吐く息の音すら憚られるほどの静謐さがそこにはあった。
通された広い客間には、気が遠くなるほど高い天井と、眩い光を放つ大きなシャンデリア。
光は宝石のように割れて、絨毯にまで降り注いでいる。
以前の私なら、この輝きに怯えてすぐに俯いていただろう。
けれど今は、藤波様や篠塚様との厳しいお妃教育の成果だろうか。
しっかりと背筋を伸ばし、顔を上げて周囲を見渡すことができている。
視線を落とさない。それだけで、私の中の何かが少しだけ強くなる。
自分の中に小さな『自信』が芽吹いていることに、安堵の溜息が漏れた。
ふと、華やかな人々がひしめく中で、私を射抜くような強い視線を感じた。
刺さる、というより、測られる。温度のない刃が肌の上を滑るみたいな。
導かれるように視線を送ると、上座に立つ一人の男性と目が合った。
けれど、その視線はすぐに、何事もなかったかのように逸らされる。
まるで、最初から見ていなかったとでも言うように。
「東宮殿下がどうかしたか?」
暁臣様が、私の視線を追って低く囁いた。
「あの方が……東宮殿下、なのですか……」
東宮殿下。次の天皇となるお方。
背丈は暁臣様よりわずかに低いくらいだろうか。けれど、立ち方が静かで、周囲の空気が自然と整っている。
年齢も彼と同じ、二十歳前後に見える。切れ長の涼やかな目元、少し長めに整えられた髪。
浮かべられているのは、柔和で、どこか人を安心させるような穏やかな微笑み。
——なのに、さきほどの視線だけが氷のように冷たい。
皇居の荘厳さともまた違う、磨き上げられた歴史の重みに気圧されそうになる。
床板が微かに軋む音さえ遠慮がちに響き、背中が勝手に強張る。
中庭に面した長い廊下を通る際、自分の吐く息の音すら憚られるほどの静謐さがそこにはあった。
通された広い客間には、気が遠くなるほど高い天井と、眩い光を放つ大きなシャンデリア。
光は宝石のように割れて、絨毯にまで降り注いでいる。
以前の私なら、この輝きに怯えてすぐに俯いていただろう。
けれど今は、藤波様や篠塚様との厳しいお妃教育の成果だろうか。
しっかりと背筋を伸ばし、顔を上げて周囲を見渡すことができている。
視線を落とさない。それだけで、私の中の何かが少しだけ強くなる。
自分の中に小さな『自信』が芽吹いていることに、安堵の溜息が漏れた。
ふと、華やかな人々がひしめく中で、私を射抜くような強い視線を感じた。
刺さる、というより、測られる。温度のない刃が肌の上を滑るみたいな。
導かれるように視線を送ると、上座に立つ一人の男性と目が合った。
けれど、その視線はすぐに、何事もなかったかのように逸らされる。
まるで、最初から見ていなかったとでも言うように。
「東宮殿下がどうかしたか?」
暁臣様が、私の視線を追って低く囁いた。
「あの方が……東宮殿下、なのですか……」
東宮殿下。次の天皇となるお方。
背丈は暁臣様よりわずかに低いくらいだろうか。けれど、立ち方が静かで、周囲の空気が自然と整っている。
年齢も彼と同じ、二十歳前後に見える。切れ長の涼やかな目元、少し長めに整えられた髪。
浮かべられているのは、柔和で、どこか人を安心させるような穏やかな微笑み。
——なのに、さきほどの視線だけが氷のように冷たい。



