微かな吐息が耳元で触れ、自分の身体が規則正しく上下する、不思議な浮遊感に包まれて、私はふと意識を取り戻した。
重厚なカーテンの隙間から、細く伸びる朝陽が一筋こぼれ落ち、まだ夢の続きを見ているような部屋の輪郭を、ゆっくりと浮かび上がらせていく。
頬に触れるのは、いつも独りで眠る布団の冷たさではない。
生き物の確かな存在を主張する、力強い拍動を伴った熱だった。
気がつくと私は、暁臣様の身体に、まるで甘える子どものように重なって眠っていた。
——私……いつの間に、こんなに深く眠ってしまったの……。
昨夜、お風呂から上がり、暁臣様の寝室で待つように言われたことは覚えている。
ベッドの端で、背筋を伸ばし、緊張しながら座っていた所までは、確かに記憶にあった。
けれど、そこから先の時間は、幸福な疲労感の中に溶けて、綺麗に消えてしまっている。
思考をぐるぐると巡らせていると、それまで一定だった暁臣様の呼吸が、ふっと揺れるように大きく動いた。
「……おはよう、すみれ。朝からそんなに可愛い顔をされると、少し困るな」
「あ、暁臣様……っ!い、いつから起きていらしたのですか……」
妻として、正式に婚儀を挙げたその初夜。
こともあろうに、旦那様を待たず、独り先に夢路を辿ってしまった。
その事実に思い至り、顔が火の出るように熱くなる。
「あの……申し訳ありません……。重いですよね、私。すぐ、すぐに降りますから……っ」
「いや。このままでいい……もう少し、こうさせてくれ」
慌てて身体を起こそうとする私を、暁臣様の太い腕が優しく、けれど抗いようのない力で引き戻す。
再び彼の胸へと頭を預ける形になり、耳元で響く鼓動が、トクン、トクンと、心地よい音を刻み始めた。
……けれど、その音は。
次第に、少しずつ、強く、激しく打ち鳴らされていく。
重厚なカーテンの隙間から、細く伸びる朝陽が一筋こぼれ落ち、まだ夢の続きを見ているような部屋の輪郭を、ゆっくりと浮かび上がらせていく。
頬に触れるのは、いつも独りで眠る布団の冷たさではない。
生き物の確かな存在を主張する、力強い拍動を伴った熱だった。
気がつくと私は、暁臣様の身体に、まるで甘える子どものように重なって眠っていた。
——私……いつの間に、こんなに深く眠ってしまったの……。
昨夜、お風呂から上がり、暁臣様の寝室で待つように言われたことは覚えている。
ベッドの端で、背筋を伸ばし、緊張しながら座っていた所までは、確かに記憶にあった。
けれど、そこから先の時間は、幸福な疲労感の中に溶けて、綺麗に消えてしまっている。
思考をぐるぐると巡らせていると、それまで一定だった暁臣様の呼吸が、ふっと揺れるように大きく動いた。
「……おはよう、すみれ。朝からそんなに可愛い顔をされると、少し困るな」
「あ、暁臣様……っ!い、いつから起きていらしたのですか……」
妻として、正式に婚儀を挙げたその初夜。
こともあろうに、旦那様を待たず、独り先に夢路を辿ってしまった。
その事実に思い至り、顔が火の出るように熱くなる。
「あの……申し訳ありません……。重いですよね、私。すぐ、すぐに降りますから……っ」
「いや。このままでいい……もう少し、こうさせてくれ」
慌てて身体を起こそうとする私を、暁臣様の太い腕が優しく、けれど抗いようのない力で引き戻す。
再び彼の胸へと頭を預ける形になり、耳元で響く鼓動が、トクン、トクンと、心地よい音を刻み始めた。
……けれど、その音は。
次第に、少しずつ、強く、激しく打ち鳴らされていく。



