神々の食卓――御厨守をしていたら神様に求婚されました

 ドキドキしながら部屋に戻った晴は、改めて短冊を見詰めた。

「うふふ、嬉しいな」

 短冊を見るたびに、ふわりと心が温まる。
 前にもらった短冊の隣に、今日の短冊を飾る。増えた短冊を嬉しい気持ちで眺めた。
 次の日も、夕暮の神の御饌の短冊が降ってきた。

『君と同じ食事を、御饌で食べたいです。昨日のケーキ、とても美味しかったです。ありがとう。夕暮の神』

「僕の今日の食事は、蕎麦と天婦羅です。天婦羅は塩でも天汁でも美味しいです。ケーキ、喜んでもらえて嬉しいです」

『君のお勧めの料理を御饌で食べたいです。玉ねぎの天婦羅、とても気に入りました。塩でも天汁でも美味しかったです。夕暮の神』

「お勧めは色々あるけど、ちょっと変わっているのが、カレーです。お師匠様の故郷の食べ物で、中津公国では珍しいです。だから、スパイスは僕しか持っていません。喜んでもらえたら、嬉しいです」

『今日も、君のお勧めをください。カレー、とてもビックリしましたが、美味しかったです。君の作る御饌は総て、美味しくて優しいですね。夕暮の神』

「今日の僕のお勧めは、酢豚定食です。いつも褒めてくださるので、作るのが何倍も楽しいです。また喜んでいただけますように」

 そんなやり取りが続いた、数日後。突然、夕暮の神からの御饌の注文がこなくなった。もう三日、短冊が降ってこない。
 晴は今日も、神々の祠で受け取った短冊を丹念に確認した。

「今日も、夕暮の神様の御饌が、ないや」

 そもそも、毎日御饌の注文をする神様のほうが珍しい。最近になって、急に増えすぎだった。だから、止まるのは普通なのかもしれけれど。

(でも、急になくなると心配になるよ)

 御饌の注文の短冊が、最近では手紙のやり取りのようで楽しかった。急に途絶えると、心配だし悲しくなる。ちょっと落ち込んだ気持ちで、晴は御厨に戻った。
 御饌を準備し、短冊を書く。夕暮の神の短冊を書けないのが、物足りない。

「ダメダメ、一人の神様だけ贔屓しない!」

 自分の頬をペチペチと叩いて、晴は立ち上がった。
 狭間には、決まり事が幾つかある。贔屓をしないのは、大事な決まり事の一つだ。

「決まり事を破ると、食べられちゃうかもしれないから」

 ある日突然、御厨守が消えることがある。人々は「食われた」という。神様に喰われたのだと。そうやって何人も、御厨守は変わっている。

(大丈夫。僕は、まだ食べられてない)

 晴が御厨守になって、二年になる。決まり事さえ守っていれば、御厨守は楽しい。自由気ままで、良い職場だ。

(間違わなければ、大丈夫)

 御饌台を持って、晴は神々の祠に向かった。