神々の食卓――御厨守をしていたら神様に求婚されました

 御厨に戻った晴は、早速料理を始めた。
 肉料理にキラキラデザート、豆のスープを作り終えて、御饌台に載せる。御饌台に積んでおけば、出来立ての状態を保って神様に届けられる。

「僕が好きな甘味、好きな甘味……」

 戸棚をごそごそ漁る。次に冷蔵庫を確認した。

「うん、材料ありそう。アレに決めた」

 ココアのスポンジを焼き、バニラ風味の生クリームをホイップしていく。

「スポンジの間に、桃を挟みまーす」

 たっぷりのバニラ生クリームを乗せたココアスポンジの上に、薄切りにした桃を並べていく。その上に生クリームを塗って、スポンジを重ねる。

「ここから、だね」

 花弁のように薄く切った桃を、重ねて並べていく。スポンジの上いっぱいに重ねる。ケーキの上に薄紅の薔薇が咲いた。

「できた! 桃の薔薇ケーキ、おひとり様食べきりサイズ!」

 満足した心持でケーキを眺める。

「いつもより上手にできちゃった」

 ほくほくした気持ちで、晴は短冊を書き始めた。

「特別な日に自分に作るケーキです。気に入っていただけたら嬉しいです」

 書き上げた短冊を、すっと撫でる。

「美味しいって言ってくれたら、いいな」

 短冊を眺めて微笑む。晴は他の短冊を書き始めた。

「えっと……山の神様へ。今日のお肉料理は、ガルガル猪の鍋です。星の神様、月の神様へ。今日のデザートは、夜空色のシュワシュワゼリーに星屑のヨーグルト添えです。秋の神様へ。ポッポ豆を使ったポタージュです。濃厚でクリーミーに仕上がりました……」

 書いた短冊をそれぞれ御饌に添える。

「よし、準備できた。神々の祠に行こう!」

 御饌台を引いて、洞窟に向かう。ぱっくり開いた大きな洞窟に入り、鉱石が照らす道を進む。

「御饌をお供えにきました! 美味しく食べていただけますように!」

 両手を広げて、天井に向かい叫ぶ。白い柱が降りて、御饌台を包んだ。光に触れた料理が解けるように消えていく。白い光が、すっと引いた。

「今日は、これで終わり」

 晴は御饌台を片付け始めた。
 ひらり、と何かが舞い落ちて、晴の頬を掠めた。

「何か落ちた……あれ、短冊だ。御饌の注文の時間じゃないのに」

 短冊に書かれた名前を見て、心臓が小さく跳ねた。

「夕暮の神様が、お返事くださったんだ」

 短冊の文字を目でなぞる。

『とても美しいケーキですね。まるで君の心のようです。夕暮の神』

 胸の鼓動が、トクトクと走った。

「褒めてもらっちゃった……嬉しい」

 心が、ジンワリ温かい。晴は短冊を胸に抱いた。