神々の食卓――御厨守をしていたら神様に求婚されました

 日の神と月の神の来訪予定日。晴と白瞑は御饌を準備していた。

「日の神様はパイがお好きなんだ。ご飯系もお菓子系もパイで注文が多かったよ。夜の神様はキラキラデザートとか、綺麗な食べ物が好きだよ」

 白瞑が、軽く頭を抱えた。

「御饌まで、そうなんだ」
「え? どうしたの?」
「いや……何でもないよ」

 軽くよろけた白瞑が、持ち直した。

「今回はお二人ともお菓子にして、パイとケーキを作ろうかなって思うんだけど」
「それはいいね。前に晴が作ってくれた桃の薔薇ケーキはとても美しかった。ああいうの、夜の神は好きそうだよ」

 桃の薔薇ケーキは、短冊でやり取りしていた頃に御饌で上げたケーキだ。白瞑が覚えていてくれて、嬉しい。

「それじゃ、綺麗なケーキがいいね」
「うん……ん?」

 台所の入口で、眷属のリスがこちらを覗いている。
 ちょっとソワソワして、慌てている様子だ。

「どうしたの……!」

 台所から廊下に出た白瞑が、顔色を変えた。

「白瞑?」

 白瞑に続いて廊下に出る。家の中に知らない神がいた。
 優しい雰囲気のお姉さんと、不機嫌そうな青年だ。

(もしかして、日の神様と月の神様。もう着いちゃったの?)

 予定時刻より、かなり早い。

「随分と早いね。:照陽(てるひ)、:夜見(よみ)」

 白瞑の雰囲気が、いつもより張り詰めている。

「ごめんなさいねぇ、白瞑。夜見が待ちきれなくて、来ちゃったの」

 照陽が眉を下げて笑う。

「とにかく広間に、どうぞ」

 白瞑が二人を促した。

「晴、悪いけど、お茶の準備をしてくれるかい?」
「うん、わかったよ」

 台所に入ろうとした晴を眺めて、夜見が鼻で笑った。

「なんだ。給仕のように扱っているのか。所詮は狸の獣人だものな」
「夜見、よしなさい」

 照陽が夜見を諭した。

「御厨守なら、給仕係にはちょうどいいだろう」

 夜見が、フンと鼻を鳴らす。

「夜見、それ以上を言うなら、私も言葉を選ばず話をさせてもらうよ」

 白瞑の言葉が、いつもより鋭い。

(氷魚様の時より、ずっと神力が尖っている。ちょっと怖い)

 夜見の目が、白瞑の後ろにいる晴に向いた。

「狸など、美しくない」

 吐き捨てて、目を逸らした。白瞑の纏う神力が、ビリっと光を帯びた。

「白瞑、落ち着いて。私たち、お話に来たのよ。広間で、皆でお話ししましょう」

 照陽が抑えようと懸命に仲裁している。
 晴は白瞑の隣に立った。

「白瞑、ちゃんとお話ししよう。僕も一緒に行くから」

 夜見があからさまに嫌そうな顔をした。その顔だけで、嫌われているのだとわかる。

(白瞑のことが好きな神様。僕が嫌われるのは仕方ない。だけど、白瞑は……)

 神力から拒否しているのがわかる。

「そうよね。さぁ、行きましょう」

 照陽に促されて、晴たちは広間に移動した。