湫憂からの報せは、すぐに着た。
「三日後に春の神、その次の日に夏の神、二日開けて日の神と月の神が一緒に来るね」
伝書鳩が届けてくれた手紙を、白瞑がまじまじ眺めた。
「冬の神様は?」
晴は思わず問い掛けた。白瞑があからさまに渋い顔になった。
「冬の神は、来ないかもしれない」
「来ないの……? それじゃ、合意がもらえないよね」
白瞑の渋い顔が、もっと渋くなった。
「来ないから……私たちが行くしかない、かもしれない」
「僕らが冬の間のお屋敷に行くの? いいの?」
湫憂は、中途半端な立場の晴を他の季節の間に行かせられないと話していた。
「私もなるべくなら晴を行かせたくないんだけどね」
白瞑が頭を抱えた。あまりに顔が険しい。
晴は星屑入りミルクコーヒーを白瞑の前に置いた。
「これ飲んで、元気出して」
「ありがとう、晴」
白瞑がカップを傾ける。小さな星がカップから零れ落ちて瞬く。
「湫憂にも、いざとなったら出向くのも仕方ないって、言われてはいるんだけど」
「そうなんだね」
湫憂の許可が取れているなら、他には何が問題なのだろう。
(来てくれないってことは、あまりよく思われていないってことなのかな)
湫憂と白瞑の会話を思い返す。白瞑と因縁がありそうな言い回しだった気がする。
「あの……白瞑と冬の神様は、あんまり仲が良くないの?」
迷いながらも、晴は思い切って聞いてみた。
白瞑がカップを傾けながら眉間に皺を寄せた。苦い顔を星屑がキラキラと照らす。
「仲が……悪いわけじゃ……今は、良くもないのかな」
煮え切らない言い方だ。
(今は良くもないってことは、昔は仲が良かったってことかな?)
晴は白瞑をじっと見詰めた。
「元々、偏屈な神で、機嫌が悪いと自分の屋敷をブリザードで凍らせて、他の神を寄せ付けないような時があるんだけど」
「そうなの? ちょっと意外かも」
短冊で御饌の注文を受けている時は、嫌な感じはしなかった。
(この前の短冊がぶっきらぼうで、ビックリしたくらいで)
思い出している晴の横顔を、白瞑が見詰めた。
「冬の神とも、私のように短冊でお話したのかい?」
フルフルと首を横に振る。
「ううん。御饌の注文だけ。お手紙みたいな短冊のやり取りをしたのは、白瞑だけだよ」
「……そっか」
白瞑が晴の頭を撫でた。カップから零れる星屑が照らす顔が、さっきより嬉しそうだ。
「でも……時々、いつもありがとうって注文の短冊に添えてくれたよ。だから、優しい神様だと思ってた」
白瞑がコーヒーを吹き出す勢いで前屈みになった。
「わわ! 大丈夫? 星屑でむせちゃった?」
「ちがう……大丈夫だよ」
あまり大丈夫そうではない声が聞こえた。
「やっぱり、そういうことか」
白瞑がしみじみと零した。よくわからなくて、晴は首を傾げた。
「だから晴を行かせたくないんだけど、仕方ないね。先延ばしにはできない」
白瞑が晴の狸の耳を撫でる。最近の白瞑は晴の耳に触れるのが好きだ。
(触れられるの、嫌じゃないけど、くすぐったい)
ずっと触られると、尻尾がむずむずしてくる。
「まずは、他の神々に会って、合意をもらおう。冬の神のことは、その後に考えようね」
「うん、わかった」
晴は素直に頷いた。
「晴は、可愛いね」
白瞑が晴の耳をずっとムニムニしている。
離してほしいけど、触っていて欲しい。晴は尻尾のむずむずに耐えていた。
「三日後に春の神、その次の日に夏の神、二日開けて日の神と月の神が一緒に来るね」
伝書鳩が届けてくれた手紙を、白瞑がまじまじ眺めた。
「冬の神様は?」
晴は思わず問い掛けた。白瞑があからさまに渋い顔になった。
「冬の神は、来ないかもしれない」
「来ないの……? それじゃ、合意がもらえないよね」
白瞑の渋い顔が、もっと渋くなった。
「来ないから……私たちが行くしかない、かもしれない」
「僕らが冬の間のお屋敷に行くの? いいの?」
湫憂は、中途半端な立場の晴を他の季節の間に行かせられないと話していた。
「私もなるべくなら晴を行かせたくないんだけどね」
白瞑が頭を抱えた。あまりに顔が険しい。
晴は星屑入りミルクコーヒーを白瞑の前に置いた。
「これ飲んで、元気出して」
「ありがとう、晴」
白瞑がカップを傾ける。小さな星がカップから零れ落ちて瞬く。
「湫憂にも、いざとなったら出向くのも仕方ないって、言われてはいるんだけど」
「そうなんだね」
湫憂の許可が取れているなら、他には何が問題なのだろう。
(来てくれないってことは、あまりよく思われていないってことなのかな)
湫憂と白瞑の会話を思い返す。白瞑と因縁がありそうな言い回しだった気がする。
「あの……白瞑と冬の神様は、あんまり仲が良くないの?」
迷いながらも、晴は思い切って聞いてみた。
白瞑がカップを傾けながら眉間に皺を寄せた。苦い顔を星屑がキラキラと照らす。
「仲が……悪いわけじゃ……今は、良くもないのかな」
煮え切らない言い方だ。
(今は良くもないってことは、昔は仲が良かったってことかな?)
晴は白瞑をじっと見詰めた。
「元々、偏屈な神で、機嫌が悪いと自分の屋敷をブリザードで凍らせて、他の神を寄せ付けないような時があるんだけど」
「そうなの? ちょっと意外かも」
短冊で御饌の注文を受けている時は、嫌な感じはしなかった。
(この前の短冊がぶっきらぼうで、ビックリしたくらいで)
思い出している晴の横顔を、白瞑が見詰めた。
「冬の神とも、私のように短冊でお話したのかい?」
フルフルと首を横に振る。
「ううん。御饌の注文だけ。お手紙みたいな短冊のやり取りをしたのは、白瞑だけだよ」
「……そっか」
白瞑が晴の頭を撫でた。カップから零れる星屑が照らす顔が、さっきより嬉しそうだ。
「でも……時々、いつもありがとうって注文の短冊に添えてくれたよ。だから、優しい神様だと思ってた」
白瞑がコーヒーを吹き出す勢いで前屈みになった。
「わわ! 大丈夫? 星屑でむせちゃった?」
「ちがう……大丈夫だよ」
あまり大丈夫そうではない声が聞こえた。
「やっぱり、そういうことか」
白瞑がしみじみと零した。よくわからなくて、晴は首を傾げた。
「だから晴を行かせたくないんだけど、仕方ないね。先延ばしにはできない」
白瞑が晴の狸の耳を撫でる。最近の白瞑は晴の耳に触れるのが好きだ。
(触れられるの、嫌じゃないけど、くすぐったい)
ずっと触られると、尻尾がむずむずしてくる。
「まずは、他の神々に会って、合意をもらおう。冬の神のことは、その後に考えようね」
「うん、わかった」
晴は素直に頷いた。
「晴は、可愛いね」
白瞑が晴の耳をずっとムニムニしている。
離してほしいけど、触っていて欲しい。晴は尻尾のむずむずに耐えていた。



