鉄姫の嫁入り~妖狐の暗殺に失敗し、契約花嫁になりました~

 一族の当主たちは捕らえられた。
 和平の名を使って暗殺を繰り返してきたことも、人の娘を何代も道具にしてきたことも、各地の領主へ明かされる。
 当主が裁かれれば終わるわけではない。

 けれど、少なくとも次の鉄姫が花嫁として送られることはなくなる。
 砂鉄を保管していた蔵も、鉄姫の術を記した書も、琥珀の配下が押さえたという。
 鉄を飲まされていた娘たちは解放され、治療を受けている。

「私も、祖母も、その前の女たちも、砂鉄を飲んだわ」

 母が自分の腹へ手を置いた。

「私には、刃を止めるほどの鉄は宿らなかった。だから次の娘を産めと言われた。砂菜にすべてを背負わせてしまった……」
「母さまのせいではありません」
「分かっている。それでも、あなたに言わなければならなかった」

 母の手を握り返す。硬い私の手の中で、母の指は細かった。

「もう、私たちのために生きなくていいのよ」
「ですが、二人の暮らしは」
「自分たちで考えるわ。砂都も、もう砂鉄を飲まなくていい」
「飲まない。絶対に」

 砂都が強く頷く。

「だから、姉さまも自分で決めて」
「何を?」
「あなたの本当の居場所を」

 居場所……?
 私はずっと前から母様と砂都といたいと願っていた……それ以外の居場所なんて……

「砂都は、母さまと一緒ならどこでも。でも、たまに姉さまに会えるところ」
「たまに?」
「毎日でもいいけど、琥珀様が嫌がりそう」
「なぜ、琥珀様の話が出てくるの」

 母と砂都が顔を見合わせた。

「姉さま、本当に分かってないの?」

 答えは、もう分かっていた。
 けれど、それを私が望んでよいのかは、一族から解放された今も分からないまま。