鉄姫の嫁入り~妖狐の暗殺に失敗し、契約花嫁になりました~

 屋敷へ戻ると、傷を手当てする。

「包帯など大げさだ。この程度の怪我、数刻したら治る」
「動かないでください」
「先ほどから動いていない」
「包帯が巻きにくいのです」
「お前の手つきが悪いのではないか」
「人の手当てなど、したことがありません」
「俺が最初か」
「はい」

 琥珀は何も言わず、包帯を巻く私の手元を見ていた。

 ふと、何かが動く気配を感じて、視線を下に向けると、琥珀の尻尾の先が、忙しなくパタパタと動いている。
 そっと、毛並みを撫でると、触れている一本が左右へ揺れた。
 続いて、残りの八本まで畳を掃くように揺れる。

「……何をしている」
「いえ、生き物のように動くんだな…と」
「……見れば分かる」
「触られると、そうなるのですか」
「……今まで、こうなったことはない」
「では、なぜ」
「俺が知るか。もう離せ」

 予期していなかったのだろう、彼自身も一番驚いた顔をしていた。

 なぜだろう……尾に触れたのはこの時が初めてではない。
 それなのに、この前とは違い、もっと触れていたいと思ってしまうのは。
 ただ、手触りを確認したいだけに違いない。そう思い込みながら、名残惜しい気持ちを押し込め、手を離した。