「砂菜」
初めて、琥珀が私の名を呼んだ。
「……なぜ、名を」
「名があるのに、兵器の呼び名を使う必要があるか」
「兵器の名の方が、扱いやすいかと思っておりました」
「お前は今、一族の兵器ではない。俺と契約した砂菜だ」
胸の奥が、妙に騒ぐのを感じる。
お互いに一線を引いていたはずが、彼はその一線を変えようとしている。
「琥珀様……」
「いつまで、様を付けるつもりだ」
「誰かの名を呼ぶことにも、呼ばれることにも慣れておりませんので」
「なら、慣れろ」
「どうやって」
「俺が呼ぶ」
振り向くとはっきりと、もう一度口にされる。
「砂菜」
「……はい、琥珀様」
「様が取れていない」
「そこは、まだ」
琥珀が何か言いかけた時、側近が報せを持ってきた。
「母君と妹君の居場所が分かりました。一族の屋敷奥に閉じ込められております。ただ、力ずくで奪えば和平が崩れるかと」
「二人へ近づくことは」
「見張りが多く、難しいかと」
「なるほど」
琥珀は少し考えたのち、私にゆっくりと視線を向ける。
「ならば、向こうから連れてこさせる」
「どのようにして」
「正式な祝言を挙げる」
「……祝言?」
「正式な祝言を挙げ、人と妖狐の盟約として一族へ知らせる」
すでに次の手を決めている顔をしていた。
「花嫁の母と妹を招くのは当然のことだ。断れば、一族の方が和平を拒んだと見なされる」
「確かに……一族にとっても、私が正式な妻になれば、琥珀様の懐へ入り込めたことになります」
「母君たちを連れてくるだろう」
「本当に、それだけの理由ですか」
口にしてから、自分でも何を訊いているのかと思った。
「他に理由が必要か」
「……いいえ」
初めて、琥珀が私の名を呼んだ。
「……なぜ、名を」
「名があるのに、兵器の呼び名を使う必要があるか」
「兵器の名の方が、扱いやすいかと思っておりました」
「お前は今、一族の兵器ではない。俺と契約した砂菜だ」
胸の奥が、妙に騒ぐのを感じる。
お互いに一線を引いていたはずが、彼はその一線を変えようとしている。
「琥珀様……」
「いつまで、様を付けるつもりだ」
「誰かの名を呼ぶことにも、呼ばれることにも慣れておりませんので」
「なら、慣れろ」
「どうやって」
「俺が呼ぶ」
振り向くとはっきりと、もう一度口にされる。
「砂菜」
「……はい、琥珀様」
「様が取れていない」
「そこは、まだ」
琥珀が何か言いかけた時、側近が報せを持ってきた。
「母君と妹君の居場所が分かりました。一族の屋敷奥に閉じ込められております。ただ、力ずくで奪えば和平が崩れるかと」
「二人へ近づくことは」
「見張りが多く、難しいかと」
「なるほど」
琥珀は少し考えたのち、私にゆっくりと視線を向ける。
「ならば、向こうから連れてこさせる」
「どのようにして」
「正式な祝言を挙げる」
「……祝言?」
「正式な祝言を挙げ、人と妖狐の盟約として一族へ知らせる」
すでに次の手を決めている顔をしていた。
「花嫁の母と妹を招くのは当然のことだ。断れば、一族の方が和平を拒んだと見なされる」
「確かに……一族にとっても、私が正式な妻になれば、琥珀様の懐へ入り込めたことになります」
「母君たちを連れてくるだろう」
「本当に、それだけの理由ですか」
口にしてから、自分でも何を訊いているのかと思った。
「他に理由が必要か」
「……いいえ」



