鉄姫の嫁入り~妖狐の暗殺に失敗し、契約花嫁になりました~

 琥珀の手が、膝の上で握られた。

「母君も、鉄姫だったのか」
「候補ではありました。鉄が弱かった母は、次の娘を産む役目に回されました」
「妹も飲まされているのか」
「はい。妹は十二です。私が戻らなければ、いずれあの子が次の鉄姫にされます」

 ……今も妹があのような目に合っていると思うと、胸が痛む。
 一日でも早く、あの場から救い出してあげたい……そんな焦燥ばかりが、日に日に強くなる。

「お前だけが、これほど硬くなった理由は」
「一族は、何代もの成果だと喜びました。刃を折った時には、三日続けて祝いがありました」
「お前のための祝いか」
「いいえ。完成した鉄姫を得た、一族の祝いです」

 あの中に、私の父もいたのだろうか。
 いたどころで、なにも変わらないだろうけど。

「狐火まで効かないことも、知っていたのか」
「私も初めて知りました。人の火では試されましたが、妖の火を受けたことはありません」
「なら、初夜は焼け死ぬと思っていたのか」
「……はい」

 琥珀の顔が強張った。

「平然としていたではないか」
「泣いたら、火を止めてくださったのですか?」
「……止めなかっただろうな」
「はい」
「そんなものを、成果と呼ぶのか」
「一族にとっては」
「俺は呼ばぬ」

 彼は立ち上がると、窓辺へ向かった。
 怒りは、私ではなく一族へ向いていた。