鉄姫の嫁入り~妖狐の暗殺に失敗し、契約花嫁になりました~

「それと……鉄姫よ。お前は契約相手を、いつまでも妖狐と呼ぶつもりか」
「他に、お名前を伺っておりません」
琥珀(こはく)だ」

 私は既に名乗っている。
 それでも琥珀は、まだ私を「鉄姫」と呼ぶ。
 契約相手としては、人の名より武器の名の方が扱いやすいのだろう。

「……琥珀様」
「様はいらぬ」
「それは契約に含まれていますか」
「今、加えてもいい」
「では、お断りします」

 なら、私も合わせて一線を引いた呼び方をするだけのこと。
 情などお互い持つような必要はないのだから。

 廊下の奥から慌ただしい足音が近づいた。

「琥珀様、南の関所より報せが。明日の会談を前に、襲撃の動きがあると」

 琥珀の表情から笑みが消える。

「人の側の名代も来るのだったな」
「はい」

 私は羽織を掴み、立ち上がった。

「私は何をしたらよろしいですか」
「まだ何も命じていない」
「明日、琥珀様のお側にいるのでしょう?」
「そうだ」
「ならば、契約後の最初の役目です」

 琥珀がこちらを見る。

「さっそく、お前の働きを見せてもらうか。鉄姫」