工場に行ったら、既に機械が動いていた。
「父さん、遅くなって、ごめん」
「おぅ、もうプリントしちゃったぞ。今、白押しプリントしているとこだ」
「わ、本当だ」
余ったアクリル板で作ってくれたようだ。
カラーイラストの上からホワイトが塗られている様を、龍牙が感動した面持ちで見詰めている。
「で、カットしていくぞ」
レーザー加工機にアクリル板を装着する。
光が絵の外側をなぞって走る。
細かいカーブをしながら、アクリル板をカットしていく。
アクスタやアクキーができる工程は、いつ見ても飽きない。
どんな作品でも綺麗だ。
「ほら、できた」
カットしたアクキーに父さんがボールチェーンを通してくれた。
俺が描いた格好良い龍と、龍牙が描いた可愛い龍をチャームで繋げて、吊り下げ式にしてくれた。
「やべぇ、父さん、センスが神」
「そりゃ、アクリルグッズ屋さんだからな。尊敬していいぞ」
父さんが得意げに笑う。
「どうぞ、龍牙君」
父さんが龍牙にアクリルキーホルダーを手渡した。
「うわぁ……うわぁ」
受け取った龍牙の手が震えている。
「すげぇ……俺と透馬の絵だ」
龍牙の目がアクキーに釘付けになった。
「龍牙君は色塗りが上手だね。バランスがいいよ。濃淡の付け方も、印刷を意識したのかな? 元絵から良かったよ」
「父さん、めちゃめちゃ褒めるじゃん」
「それくらい上手だったんだよ。印刷する側の立場に立って考えてくれてる気遣いを感じたよ。長いことこういう仕事しているとね、わかるんだ。あれ? でもアクキー作るのは初めてだっけ?」
龍牙の顔を見た父さんが言葉を止めた。
不思議に思って龍牙を振り返る。
龍牙が、泣いていた。
「え? 何で? どうしたんだよ、龍牙」
慌てた俺は、近くにあったティッシュを龍牙に手渡した。
龍牙が、ティッシュで涙を拭いて鼻をかんだ。
「ごめん、嬉しくて、涙出た」
「そっか、プロのアクスタ職人の意見だもんな」
絵描きとしては嬉しい誉め言葉だ。
「それも、嬉しかったけど。俺んち、母子家庭で父親いねぇから。父さんいたら、こんな感じかなって、ちょっと思った」
ドキン、と胸が跳ねた。
そんな話、初めて聞いた。
「そうか」
父さんが龍牙の頭を、そっと撫でた。
「龍牙君、今日はうちで夕飯、食べていくかい?」
「良いんですか?」
顔を上げた龍牙が、はたと気が付いた顔をした。
「やっぱり、今日はやめときます。母さん、夜の仕事してるんだけど。仕事行く前に俺の飯、作ってると思うから。今日はいらないって言ってないから」
「そうか。また、いつでも遊びにおいで。その時は、夕飯はいらないってお母さんに伝えておいで」
「はい、ありがとうございます」
龍牙がティッシュで目頭を押さえた。
急に色々わかった。
どうして週に三日もアルバイトをしているのか。
どうしていつも、どこか寂しそうな顔をしているのかも。
「やっべぇ宝物、できた」
アクキーを翳して嬉しそうに笑う龍牙は、子供みたいに無邪気だった。
その笑顔に、俺はどこか安心したんだ。
「父さん、遅くなって、ごめん」
「おぅ、もうプリントしちゃったぞ。今、白押しプリントしているとこだ」
「わ、本当だ」
余ったアクリル板で作ってくれたようだ。
カラーイラストの上からホワイトが塗られている様を、龍牙が感動した面持ちで見詰めている。
「で、カットしていくぞ」
レーザー加工機にアクリル板を装着する。
光が絵の外側をなぞって走る。
細かいカーブをしながら、アクリル板をカットしていく。
アクスタやアクキーができる工程は、いつ見ても飽きない。
どんな作品でも綺麗だ。
「ほら、できた」
カットしたアクキーに父さんがボールチェーンを通してくれた。
俺が描いた格好良い龍と、龍牙が描いた可愛い龍をチャームで繋げて、吊り下げ式にしてくれた。
「やべぇ、父さん、センスが神」
「そりゃ、アクリルグッズ屋さんだからな。尊敬していいぞ」
父さんが得意げに笑う。
「どうぞ、龍牙君」
父さんが龍牙にアクリルキーホルダーを手渡した。
「うわぁ……うわぁ」
受け取った龍牙の手が震えている。
「すげぇ……俺と透馬の絵だ」
龍牙の目がアクキーに釘付けになった。
「龍牙君は色塗りが上手だね。バランスがいいよ。濃淡の付け方も、印刷を意識したのかな? 元絵から良かったよ」
「父さん、めちゃめちゃ褒めるじゃん」
「それくらい上手だったんだよ。印刷する側の立場に立って考えてくれてる気遣いを感じたよ。長いことこういう仕事しているとね、わかるんだ。あれ? でもアクキー作るのは初めてだっけ?」
龍牙の顔を見た父さんが言葉を止めた。
不思議に思って龍牙を振り返る。
龍牙が、泣いていた。
「え? 何で? どうしたんだよ、龍牙」
慌てた俺は、近くにあったティッシュを龍牙に手渡した。
龍牙が、ティッシュで涙を拭いて鼻をかんだ。
「ごめん、嬉しくて、涙出た」
「そっか、プロのアクスタ職人の意見だもんな」
絵描きとしては嬉しい誉め言葉だ。
「それも、嬉しかったけど。俺んち、母子家庭で父親いねぇから。父さんいたら、こんな感じかなって、ちょっと思った」
ドキン、と胸が跳ねた。
そんな話、初めて聞いた。
「そうか」
父さんが龍牙の頭を、そっと撫でた。
「龍牙君、今日はうちで夕飯、食べていくかい?」
「良いんですか?」
顔を上げた龍牙が、はたと気が付いた顔をした。
「やっぱり、今日はやめときます。母さん、夜の仕事してるんだけど。仕事行く前に俺の飯、作ってると思うから。今日はいらないって言ってないから」
「そうか。また、いつでも遊びにおいで。その時は、夕飯はいらないってお母さんに伝えておいで」
「はい、ありがとうございます」
龍牙がティッシュで目頭を押さえた。
急に色々わかった。
どうして週に三日もアルバイトをしているのか。
どうしていつも、どこか寂しそうな顔をしているのかも。
「やっべぇ宝物、できた」
アクキーを翳して嬉しそうに笑う龍牙は、子供みたいに無邪気だった。
その笑顔に、俺はどこか安心したんだ。



