放課後アクスタ部(部員二名)

 父さんの品質チェックを終えたアクスタたちを持って、俺たちは部屋に戻った。
 籠いっぱいのアクスタを床に置く。

「おじさん、凄かったなぁ。職人て感じだ」

 アクスタを眺めながら、龍牙がしみじみと言った。

「まぁ、ね」
 
 自分の親を褒められて、悪い気はしない。
 ただ、ちょっと照れくさい。

「俺が絵を描き始めたのも、父さんの影響なんだ。仕事柄もあるだろうけど、具体的なアドバイスくれるから、絵も上手くなって楽しくて」
「そっか。格好良いお父さんだな」

 龍牙が笑ってくれた。

「うん」

 龍牙は父親がいないんだから、父さんの自慢みたいな話なんか聞かせたくないのに。
 それでも龍牙は笑ってくれるから、聞いてもらえて嬉しいと思った。

「こんな風に形になるとさ、もっと作りたいって思うな」

 龍牙が嬉しそうにアクスタを手に取った。

「そうだね。次は何、作る?」
「あれ、作ってみたい。アクリルボード」
「アクリルボードかぁ。前にも言っていたよね。絵柄は?」
「俺と透馬」
「へ?」

 龍牙がスケブを取り出して、サラサラと絵を描いた。

「こんな感じで、ミニキャラにしてさ」
「ふんふん」

 スケブに、俺と龍牙のミニキャラが描かれていく。

「アクリルボードにデザインして」

 龍牙がイラストを描いたスケブをテーブルに立てた。

「こんな風に飾ったら、可愛い」
「おぉ! 文化祭でテーブルに飾れたら、めちゃ良かった」
「それな。今からじゃ間に合わねぇしな」
「間に合ったとしても、何より予算だなぁ」

 特賞でもらった金一封は、アクスタ作りにあてた。
 足りない分はお互いに自己負担しているから、金がない。

(それにしても、龍牙が描いた俺たちのミニキャラが可愛い)

 この二ヶ月で龍牙は、かなり絵が上達した。
 俺の真似とか言ってるけど、そういうんじゃない。
 ちゃんと龍牙の絵だ。

(もっともっと、龍牙と楽しいことしたい)

 そういう欲が湧いてくる。
 その想いは、大量のアクスタが目に入って、現実に戻った。

「アクリルボードは、次の機会だな。とりあえず俺たちは、梱包しよう」
「そうだった、始めないと終わらない」

 龍牙が珍しく当たり前のことを言った。
 ゴム手袋を龍牙に渡す。

「このゴム手袋を付けて、アクスタ本体と台座をアルミ袋に入れて、封をする」

 とりあえず一個、やって見せた。

「袋の端っこに、丑とか寅とか書くの忘れないようにな。わからなくなるから」
「りょ」
 
 龍牙が手袋を付けて、作業を始めた。
 俺たちはアクスタを袋に詰め始めた。

「今日の夕食、何かなぁ」
「透馬は、何が好き?」
「ハンバーグ」
「俺も好き。学食のハンバーグ、美味しいよね」
「美味い! しかもデカい!」

 翔陽高校の学食は、いろんなメニューがビッグサイズだ。
 しかも安いから、食べ盛りに優しい。

「行きたいとこ、ある?」
「ムーミンパーク」
「ムーミン?」
「うん。もしくはジブリ博物館。猫バスいるんだって」
「何それ、俺も触りたい」
「次のデート、ジブリ博物館だな」
「いいね。透馬と猫バス、一緒にいたら可愛い」

 たわいない会話をしながら、作業が進む。
 龍牙とだったら何をしていても楽しいんだ。
 今だって、隣にいるだけでちょっとドキドキしている。
 そんな毎日が、嬉しい。

 夏の終わりの夕暮れが、空を朱色に染め始めていた。