放課後アクスタ部(部員二名)

 アクスタのテンプレも仕上がって、あとは工場で作るだけの状態になった。
 余裕をもって作っているつもりだったけど、あっという間に九月の連休になった。

 九月下旬だというのに太陽の熱さが肌を焼く、昼下がり。
 俺は駅前で見慣れた姿を探していた。

「いた、龍牙!」

 駅から出てきた龍牙に手を振る。
 龍牙が小走りに俺に寄った。

「お待たせ」
「待ってないよ」

 二人連れ立って歩き出す。
 
「コンビに寄っていい? おやつ買っていこう」
「チョコならあるけど」

 手に持った紙袋を見せられた。

「これ、お高いチョコ! ブランドチョコ!」

 滅多に見ないブランドロゴに、驚いて叫ぶ。

「友達の家に泊まりとか初めてだから、母さんが喜んで、奮発したらしい」

 龍牙が、はっと顔色を変えた。

「友達じゃなくて、恋人だけど」
「気にすんなって。うちの親も友達って思ってるから」
「ん、そっか」

 お互いに、まだ親に打ち明ける勇気はないままだ。
 申し訳なく思いつつも、龍牙も同じなんだと思うと安心する。

「そういうのは、ゆっくりやってこ」
「うん」
「それより、泊まりは俺の家が初めてなのが嬉しい。えへへ」

 俺が龍牙と一番仲がいいんだと思えて、嬉しい。
 ちょっとした優越感だ。
 龍牙が、きゅっと唇を噛んだ。

「透馬って、突然可愛いこととか嬉しいこと、言い出す」

 龍牙の指が俺の指を握った。

「抱きしめたくなる」

 ドキン、と心臓が跳ねた。
 触れている指先が、トクトクと脈を打つ。

「家に……着いてから」
「うん」

 もどかしい気持ちを抱えたまま、俺たちはコンビニに入った。

「ふわぁ、涼しい」
「今日も暑いもんな」

 龍牙の視線が、奥の壁で止まった。
 どうしたのかと視線の先を追いかける。

「あ……ポスター」

 二人で描いた文化祭のポスターが、インフォメーションに掲示してあった。
 最近はいろんな場所に見付けるから見慣れてきた。
 けれど、二人で見付けると、一人の時とは感じ方が違う。
 何というか、くすぐったい。

(今思えば、このポスター描いたのって、話すようになったばかりの頃だったよな)

 少なくとも、今ほど仲良くなかった。

(だけど、この完成度は、アクスタに負けてない)

 よくこれだけの絵が描けたと、自分たちに感心する。
 改めて、自分たちが描いたポスターに見入った。

「このポスター描いたの、すげぇ昔みてぇ」

 龍牙がクスリと笑んだ。

「まだ二ヶ月くらいしか経ってないの、変な感じ」
「そうだね。大昔みたいに感じる」

 龍牙とまともに話すようになってから、まだ二ヶ月程度しか経っていない。
 もっとずっと昔から友達だった気がする。
 そう思ったら不思議な気持ちになった。
 
「あのポスター、越えたいよな」
「うん、俺たちはアクスタ部だからね」
「気合、入ってきた」

 龍牙が拳を握る。

「最後の詰め、頑張ろ」

 拳を持ち上げる。
 龍牙が俺の拳に拳をぶつけた。

「早くお菓子買って帰ろう。ポテチ欲しい。龍牙は?」
「俺もポテチと……グミほしい」
「いいね。あと飲み物、炭酸買ってく」

 そんな話をしながら、買い出しをして家に向かった。
 

「ただいまぁ」

 玄関を開けたら、リビングから美兎が顔を出した。

「お兄ちゃん、おかえり。龍牙くん、いらっしゃい」
「美兎ちゃん、こんにちは」

 龍牙に挨拶した美兎が、照れた様子でリビングに入っていった。

「ママ―、お兄ちゃんが龍牙くんと帰ってきたよ」

 美兎の言葉にドキリとする。

(同じ家に帰って来るって、ちょっと特別かも)

 母さんがリビングから出てきた。

「龍牙くん、いらっしゃい」
「今日からお世話になります」

 ぺこりと頭を下げると、紙袋を差し出した。

「これ、良かったら皆さんで召し上がってください」
「まぁまぁ、いつもありがとうね。あらあら、美味しそうなチョコ」
「外が暑かったから、溶けているかも」
「冷やすから、大丈夫よ。あとで皆でいただきましょうね。だけど、本当に気にしなくていいのよ。次は手ぶらで来てね」
「ありがとうございます」

 龍牙がまた、頭を下げた。

「嫌いな食べ物やアレルギーはある?」
「特にないです」
「わかったわ。夕飯、楽しみにしてね」
「はい、楽しみです」

 龍牙の顔がちょっと照れている。
 俺も一緒に照れくさくなった。

「落ち着いたら、お父さんに声を掛けてね。今、データの確認してくれているわよ」
「マジ? 父さん、どこにいるの?」
「工場にいるわ」
「わかった!」

 俺は階段を駆け上った。

「龍牙、荷物置いて工場に行こう!」
「うん」

 俺の部屋に荷物を置いて、急いで工場に向かった。