夏休み最終日。
アクスタ部は文化祭実行委員の委員長、小関先輩に呼び出された。
「夏休みはほぼ毎日、部活に来ているんだろう。熱心だね」
小関が感心したように言った。
「えっと、文化祭の模擬店に出すアクスタが、まだ仕上がっていないので」
「休みで時間を取れる時に描き上げようと思いました」
こういう時も龍牙はあまり緊張していない。
俺は小関先輩がちょっと怖いけど、そういうのはないみたいだ。
「なるほど。文化祭は十月最初の週末だからね。もう一カ月程度しか時間がない。賢明な判断だよ」
小関がにこやかに頷いた。
「それで、俺たちは何で呼び出されたんでしょうか」
おずおずと聞いてみる。
「二人が描いたポスターがメインポスターに決まったんだ。特賞だよ」
「えぇ!」
思わず前のめりに驚いた。
さすがの龍牙も驚いた顔をしている。
「どっちの絵ですか?」
龍牙が間髪入れずに問い掛けた。
「空に手を伸ばしているほうだね」
「そうですか」
龍牙があからさまに肩を落とした。
「もう一枚のほうも採用になったから、校内に張り出されるよ。特賞をとったメインの絵はご近所の商業施設などにも貼っていただくから、いろんな場所で見られるよ」
「ひぇ……ひえぇ」
もはや言葉にならなかった。
「文化祭当日は拡大したメインポスターを一番目立つ場所に掲示する予定だよ」
「大きく、目立つ……はわわ」
俺は思わず龍牙の腕を掴んだ。
嬉しいけど、慣れない栄誉に恐縮する。
「有難いですが、先輩。あんまり透馬を怯えさせないでください」
「特段、誇張して話してはいないよ。事実を伝えたまでだ」
小関先輩が楽しそうに俺を眺めている。
俺の反応を楽しんでいるっぽい。やっぱり怖い。
「こちらが文化祭実行委員からの特賞、金一封だ」
小関先輩が仰々しく両手で差し出した。
龍牙に突かれて、俺が金一封を受け取った。
「うわぁ、もらっちゃった」
改めて手にすると、実感が湧いてくる。
「どう使っても自由だが、アクスタ部は同好会なんだろう。二人で描いたのなら、部費に回すのもいいんじゃないか?」
同好会は部費がない。
小関先輩の言う通り、部費に回せば文化祭のアクスタ作成の足しにできる。
俺はキラキラした気持ちで龍牙を振り返った。
「透馬が良いなら、俺もそれが良いと思う」
龍牙が賛成してくれた。
「じゃあ、部費に回そう」
アクスタ作成も、父さんの工場で身内割がきくがタダではない。
部費ができれば、龍牙の負担も減らせる。
「ポスターに関しては使用権を実行委員に一任してもらう。何かトラブルがあればそれも実行委員が引き受ける。気兼ねなく相談に来てくれ」
小関先輩の話を聞いて、ピンときた。
恐らくは峰岸先輩の話をしているんだろう。
水までぶちまけてダメにしたはずのポスターが、描き直して特賞を取りメインに起用されたとあっては、どんな嫌がらせを仕掛けてくるか、わからない。
「その時は、よろしくお願いします」
俺たちは二人揃って小関先輩に頭を下げた。
実行委員会の部屋を出る。
浮き立った気持ちで歩き出した。
「やっぱり、透馬の絵はすごい」
龍牙が嬉しそうに呟いた。
「構図を龍牙が考えてくれたからだよ。俺一人じゃ、あの絵は描けなかった」
もっと平坦でありきたりな絵になっていたと思う。
「二人でもらった金一封だよ」
「この調子でアクスタも仕上げるか」
「うん!」
夏休みは終わったけれど、文化祭まであと一月ある。
アクスタも、もうすぐ仕上がる。
跳ねるように歩きながら、俺たちは部室に戻った。
アクスタ部は文化祭実行委員の委員長、小関先輩に呼び出された。
「夏休みはほぼ毎日、部活に来ているんだろう。熱心だね」
小関が感心したように言った。
「えっと、文化祭の模擬店に出すアクスタが、まだ仕上がっていないので」
「休みで時間を取れる時に描き上げようと思いました」
こういう時も龍牙はあまり緊張していない。
俺は小関先輩がちょっと怖いけど、そういうのはないみたいだ。
「なるほど。文化祭は十月最初の週末だからね。もう一カ月程度しか時間がない。賢明な判断だよ」
小関がにこやかに頷いた。
「それで、俺たちは何で呼び出されたんでしょうか」
おずおずと聞いてみる。
「二人が描いたポスターがメインポスターに決まったんだ。特賞だよ」
「えぇ!」
思わず前のめりに驚いた。
さすがの龍牙も驚いた顔をしている。
「どっちの絵ですか?」
龍牙が間髪入れずに問い掛けた。
「空に手を伸ばしているほうだね」
「そうですか」
龍牙があからさまに肩を落とした。
「もう一枚のほうも採用になったから、校内に張り出されるよ。特賞をとったメインの絵はご近所の商業施設などにも貼っていただくから、いろんな場所で見られるよ」
「ひぇ……ひえぇ」
もはや言葉にならなかった。
「文化祭当日は拡大したメインポスターを一番目立つ場所に掲示する予定だよ」
「大きく、目立つ……はわわ」
俺は思わず龍牙の腕を掴んだ。
嬉しいけど、慣れない栄誉に恐縮する。
「有難いですが、先輩。あんまり透馬を怯えさせないでください」
「特段、誇張して話してはいないよ。事実を伝えたまでだ」
小関先輩が楽しそうに俺を眺めている。
俺の反応を楽しんでいるっぽい。やっぱり怖い。
「こちらが文化祭実行委員からの特賞、金一封だ」
小関先輩が仰々しく両手で差し出した。
龍牙に突かれて、俺が金一封を受け取った。
「うわぁ、もらっちゃった」
改めて手にすると、実感が湧いてくる。
「どう使っても自由だが、アクスタ部は同好会なんだろう。二人で描いたのなら、部費に回すのもいいんじゃないか?」
同好会は部費がない。
小関先輩の言う通り、部費に回せば文化祭のアクスタ作成の足しにできる。
俺はキラキラした気持ちで龍牙を振り返った。
「透馬が良いなら、俺もそれが良いと思う」
龍牙が賛成してくれた。
「じゃあ、部費に回そう」
アクスタ作成も、父さんの工場で身内割がきくがタダではない。
部費ができれば、龍牙の負担も減らせる。
「ポスターに関しては使用権を実行委員に一任してもらう。何かトラブルがあればそれも実行委員が引き受ける。気兼ねなく相談に来てくれ」
小関先輩の話を聞いて、ピンときた。
恐らくは峰岸先輩の話をしているんだろう。
水までぶちまけてダメにしたはずのポスターが、描き直して特賞を取りメインに起用されたとあっては、どんな嫌がらせを仕掛けてくるか、わからない。
「その時は、よろしくお願いします」
俺たちは二人揃って小関先輩に頭を下げた。
実行委員会の部屋を出る。
浮き立った気持ちで歩き出した。
「やっぱり、透馬の絵はすごい」
龍牙が嬉しそうに呟いた。
「構図を龍牙が考えてくれたからだよ。俺一人じゃ、あの絵は描けなかった」
もっと平坦でありきたりな絵になっていたと思う。
「二人でもらった金一封だよ」
「この調子でアクスタも仕上げるか」
「うん!」
夏休みは終わったけれど、文化祭まであと一月ある。
アクスタも、もうすぐ仕上がる。
跳ねるように歩きながら、俺たちは部室に戻った。



