放課後アクスタ部(部員二名)

 八月に入った。
 いよいよアクスタ部のメイン活動、アクリルスタンド作りが始まった。

「うちの工場で出してるアクスタの種類、これなんだけどさ。どれがいい?」

 タブレットでホームページを表示する。

「んー……」

 龍牙が真剣に種類を模索している。

「値段なぁ」
「それな」

 作ってみたいアクスタは沢山あるが、凝ったデザインは高い。

「数も多いし、スタンダードが一番……あ!」
「ん?」

 龍牙がアクキースタンドを指さした。

「アクキーにもできてスタンドにもできるの、可愛い」

 龍牙の目がワクワクしている。

「けど、頭のトコについてるキーホルダー、邪魔じゃね? アクスタとして飾るには美しくないというか」
「それは、そうか。キーホルダーのアタッチメント、猫とかハートとか、可愛いなぁ」

 そういえば龍牙は、自分のアクキーを作った時も悩みに悩んだ末、黒のボールチェーンにしていた。

「今回はアクスタだから、凝るなら台座かな」
「台座もデザインできるんだ。アクスタ部って入れたいな」
「ローマ字で入れたら格好良くない?」
「それいい」

 二人でアイデアを出しながら、アクスタの種類を決めていく。

「ホロ加工は十二個だったらサービスでしてくれるって、父さんが言ってた」
「めちゃめちゃ有難い」

 十二支を各十個ずつ作り、うち一個をホロ加工にする。
 見本品以外は個包装して、どれがホログラム加工かわからないように隠す。

「そうなるとやっぱり、一番安いスタンダードかな」
「そうだな。いつか、これ作ってみたい」

 龍牙がアクリルボードを指さした。

「めっちゃいいな。文化祭終わったら、作る?」
「マジ?」
「売り物じゃなくて、部の活動としてさ。二人で最高の一枚を仕上げる的な」
「それ、最高過ぎる」

 龍牙が手で顔を覆って何かを噛み締めている。

「透馬と二人で作るとか最高」

 俺も、めちゃくちゃ楽しみだ。
 早く作りたくなっちゃうから、他に視線を逸らした。

「木製キーホルダーとかバッジとかも憧れるよな」
「わかる。今回のアクスタ、干支だから木製スタンドでもいいよね」
「そうなんだけど、割れやすそうってのが怖いよな」

 実際、木製スタンドは輸送の途中なんかに割れやすくて事故が多いと、父さんが話していた。だからあんまり、受注しないらしい。

「確かになぁ。見た感じ、薄いもんね」

 龍牙が画面を拡大しながら確認している。

「スタンダードなアクスタにして、台座を和柄にしたら、映えるんじゃね?」

 俺はスマホで和柄を検索した。

「この、雲っぽいのとか合いそう。基本、昔からある着物の柄とかは著作権ないから使える」
「おぉ! いいね。バックのホワイトに柄付けるのは?」
「ちょっとお高くなるけど……予算内でいけるかな」

 パチパチと簡単に電卓を弾く。

「お、ギリいけそう。格好良くできそうじゃん」
「イラストに合う柄、探すの楽しそう」

 龍牙が嬉しそうに笑った。

(あ……いつもより、可愛い)

 純粋に絵を楽しんでいる時の龍牙は、可愛い。
 うっかり見惚れる。
 そんな龍牙を眺めていると、どうしてか、胸がドキドキする。

「とりあえず、描き始めてみる? どれから描く?」

 龍牙が鉛筆を持ってスケブに向かった。
 肩がもうワクワクしている。

「え、えっと……馬と兎と龍は、俺らが持ってるアクキーのアレンジでいいかな。それ以外は、描き起こしになるけど」

 俺はドキドキする胸を隠しながら、自分のアクキーを出した。

「サイズが大きくなるから、構図、自由になるよな」

 俺は何となく子と丑を描いてみた。
 ぬいぐるみのようにアレンジした可愛いネズミとウシだ。

「やべぇ……めちゃめちゃ可愛い。俺が欲しい」
「構図、考えてくれよ」

 ちょっと照れた気持ちで、話を戻す。

「うん、考える」

 俺の絵を見ながら、龍牙が構図を切った。
 ネズミがヒクヒクと鼻を持ち上げている絵と、牛がお尻で座っているラフが描き上がった。

「こんな感じ」
「じゃぁ……こうか」

 龍牙の構図を元に絵を描き改める。

「全然違う絵みたいになるな」

 俺がただ描いただけじゃ、ネズミがいるだけなのに。
 龍牙の構図で描くと、ファンシーなネズミが今にも動き出しそうだ。
 一気に花が増した。

「やべぇ、透馬の絵がやべぇ」

 龍牙が真顔で呟いている。

「龍牙の構図が上手すぎるんだよ。ウシも描くから」

 俺はスケブに集中した。

(どうしよう、めちゃめちゃ楽しい)

 龍牙の構図に沿って描くと、自分の絵が何倍も上手くなった気になる。
 絵が華やかになって、別のもののようになる。
 それが楽しくて仕方ない。

(龍牙と一緒の時間が、好きだ)

 龍牙は相変わらず「うん」とか「それいい」とか、短い返事が多い。
 それでも不思議と、何を考えているのかは伝わってくる。
 だから、一緒にいて楽しいし、気持ちが楽だ。

(この時間がずっと、続けばいいのに)

 今日は龍牙がバイトだから、部活は早めに切り上げる。
 それが残念で仕方ない。
 そんな自分に、少しだけ戸惑っていた。