これまで以上に多くの人間がひしめく会場内は社交に熱心な者の声で賑やかだ。
シルフィードの王子ベニトアと歓談する王太子アズライルの姿を捉えながらエルディーテは吐息を溢した。
しかしふと、サフィアを見た直後に違和感を覚える。
「――おかしい……おい、バロン。王女の護衛騎士が姿を消した」
焦りが滲む声を抑えながら、すぐ傍に居る同期に声をかけたが、バロンは先ほどの応酬を引き摺っているのかまともに取り合おうとしない。
「……そんなわけないだろう」
「先ほどまでサフィア様の直ぐ後ろに控えていたはずだ……なぜ居ない」
「お前、公の場じゃ警護させてもらえないからって仲間の怠慢を疑う気かよ」
「そうじゃない!」
瞳を揺らしエルディーテはサフィア達の周囲を見遣る。しかし一瞬目を離した後には護衛騎士の姿がなく、嫌な予感が胸をどくどくと打つ。
「……怠慢じゃない。バロン!サフィア様の元へ行く、周囲の警戒を……っ!!」
エルディーテは足早にサフィアの元へ向かう。
「おい、勝手に持ち場を離れるな!」
バロンが声を荒げたが、エルディーテの視線はサフィアに注がれており、当然聞く耳など持っていなかった。
人を交わしながらサフィアの元へ急ぐ。
しかし、それは一瞬だった。
サフィアの元へ副団長がにこやかに現れ、背後から薄い身体を剣で貫いたのだ。
赤い血がドレスを濡らし、黒いしみが広がってゆく。
「リシアの宝石は守られた!王女は身を汚すことなくリシアに眠り続ける!リシア万歳っ!」
副団長は大声で叫び、血濡れた剣を天に向かって掲げる。
刹那の出来事に周囲は唖然として固まった。
「どうかしている、っ……」
時が止まったかに思えた場は数拍の間を置き空気が割れたように数多の悲鳴が叫び声が上がる。
ざわめく会場は混乱し、人の流れと逆に走り出したエルディーテは副団長目掛けて剣を振い、そして無我夢中で取り押さえた。
「早く!医者を呼んでくれ!サフィア王女を……早くっ!」
絨毯に副団長を押さえつけながらエルディーテは必死に叫んだ。
しかしサフィアは即死だった。
この日、隣国シルフィードとの和平の証でもあった婚姻に反対する派閥であった帝国騎士団副団長にサフィアは襲撃され、エルディーテは拠り所を失った。
シルフィードの王子ベニトアと歓談する王太子アズライルの姿を捉えながらエルディーテは吐息を溢した。
しかしふと、サフィアを見た直後に違和感を覚える。
「――おかしい……おい、バロン。王女の護衛騎士が姿を消した」
焦りが滲む声を抑えながら、すぐ傍に居る同期に声をかけたが、バロンは先ほどの応酬を引き摺っているのかまともに取り合おうとしない。
「……そんなわけないだろう」
「先ほどまでサフィア様の直ぐ後ろに控えていたはずだ……なぜ居ない」
「お前、公の場じゃ警護させてもらえないからって仲間の怠慢を疑う気かよ」
「そうじゃない!」
瞳を揺らしエルディーテはサフィア達の周囲を見遣る。しかし一瞬目を離した後には護衛騎士の姿がなく、嫌な予感が胸をどくどくと打つ。
「……怠慢じゃない。バロン!サフィア様の元へ行く、周囲の警戒を……っ!!」
エルディーテは足早にサフィアの元へ向かう。
「おい、勝手に持ち場を離れるな!」
バロンが声を荒げたが、エルディーテの視線はサフィアに注がれており、当然聞く耳など持っていなかった。
人を交わしながらサフィアの元へ急ぐ。
しかし、それは一瞬だった。
サフィアの元へ副団長がにこやかに現れ、背後から薄い身体を剣で貫いたのだ。
赤い血がドレスを濡らし、黒いしみが広がってゆく。
「リシアの宝石は守られた!王女は身を汚すことなくリシアに眠り続ける!リシア万歳っ!」
副団長は大声で叫び、血濡れた剣を天に向かって掲げる。
刹那の出来事に周囲は唖然として固まった。
「どうかしている、っ……」
時が止まったかに思えた場は数拍の間を置き空気が割れたように数多の悲鳴が叫び声が上がる。
ざわめく会場は混乱し、人の流れと逆に走り出したエルディーテは副団長目掛けて剣を振い、そして無我夢中で取り押さえた。
「早く!医者を呼んでくれ!サフィア王女を……早くっ!」
絨毯に副団長を押さえつけながらエルディーテは必死に叫んだ。
しかしサフィアは即死だった。
この日、隣国シルフィードとの和平の証でもあった婚姻に反対する派閥であった帝国騎士団副団長にサフィアは襲撃され、エルディーテは拠り所を失った。


