死者を救う試練で、初恋の騎士は眠れぬ番犬になっていた ~エルディーテの冥界追想録~

思いがけず誰かの知らない一面を垣間見た時、突然の理不尽を突きつけられた時。
人は問答無用で人生の岐路に引きずり出される。

そうやって選ばざるを得ずして選択させられた場合、往々にして良い結果を生むことはない。
オルディスの人生はまさにその連続だった。

そして私は、彼が選んできた最悪の結果の先に立っている。
本当に私の求める答えは彼の人生の中にあるのだろうか。

ある一抹の疑念が過り、その恐ろしい未来を想像して迷いが生まれたが、けれど今の自分に出来ることは最期まで見届けることしかないのかもしれない。



平穏と不穏が同居する日常から突然攫われるように、エルディーテの視界は暗転した。

暗がりの中で聞こえてきたのは誰かの話し声。

「っ……エルディーテ様になんと言ったの?」

「あなたと約束をしていると」

「勝手なことを……」

それが懐かしい指導者の声であったことに気づいたのは、彼女がある騎士の名を呼んだ時だった。

「セムセイ様……私はあなたと話すことなどありません。放してくださる?」

「……出来ません。あなたに別れを告げられて確信したんです。こんな別れはおかしい。一体何から私を遠ざけようとしているのですか?」

揉めているような会話は、ローゼとセムセイのものだった。

閉じた扉が出現し、エルディーテがそれを開くと扉の前で行く手を阻むように立ち塞がりローゼの肩を掴むセムセイの姿があった。

「君が何に苦しんでいるのか私は知りたいのです」

「一体なんのことですの……それよりも、私たちがここに居るとエルディーテ様達が知っているとはいえ、未婚の男女が密室に二人でいるのは問題ですわ」

眦を吊り上げたローゼは彼女にしては珍しく、強引に腕を払ってセムセイの横を通り過ぎようとする。しかしセムセイは彼女の手首を捕えて縋るように声をあげた。

「ローゼ……!」

けれどもローゼの瞳は冷ややかなものだった。

「二度も言わせないで。私にはもう新しい婚約者が出来ましたの。あなたよりもずっと素敵な殿方で、彼に心配をかけるような迂闊な行為をしたくありません」