死者を救う試練で、初恋の騎士は眠れぬ番犬になっていた ~エルディーテの冥界追想録~

「兄さんが狙ってる女にちょっかい出すなって意味だよ、愚図が!!」

「ちょっかいなんて……僕が、その……一人だったので。それで親切にしてくれただけだと……」

「よく言うぜ。この不純物がっ!」

――不純物?

刹那、アランの嫌味ったらしい声が響きティールがレニーの身体をどついた。

「おいっ、何しているんだ?」

尻餅をつくレニーの姿にさすがに黙っていられず歩み寄ると、突如現れたユークに対しアラン達が舌打ちし睨む。

「どっから湧いてきたんだよ」

「どつく必要があったのか?」

レニーを助け起こしながら問えば、アランは唇を尖らせたのち吐き捨てるように溜息を零した。

「うちはこれが普通だ。他所の家に口出しする気かよ」

「相変わらず極端だな。こっちは呼びに来ただけだ。お前が弟を気にかけ過ぎているせいで出陣が遅れかねない。大人達はもう支度が終わりそうだぞ」

「そうかよ。相変わらず優等生なことで」

「鷹狩では足並みは揃えるべきだからな。相手が誰であろうと」

「……――おい、ティール。行くぞ!」

アランはユークの言葉を無視すると、気まずそうにしている次男に声を掛けた。

一方のレニーは押し黙ったまま立ち去ってゆく兄達から視線をユークに移す。

その瞳は何か言いたげだった。

ユーク自身、レイヴン家に異質なものを感じたが、しかし他家の事情に深入りすべきでない。

視線を避けるようにしてユークはひと言告げた。

「……私も失礼するよ」

実の兄弟に厭われているというのは不憫な話だが、ユークは時間がないことを理由にその場から立ち去ることに決めたのだ。

「あっ、すみません。ありがとうございました……!」

レニーのたどたどしい礼の言葉が響き、振り返らずに片手を挙げる。

貴族たるもの、一個人を可哀想などとは思ってはならない。

しかし、レイヴン家の事情を情報の一つとして心の奥にしまい込んだつもりだったが、ユークはその日以降、明らかに兄達と気質が異なるレニーが引っかり、必死に言い返す姿が脳裏に焼き付いていた。